藻類デスモデスムス属

フェアウェルの藻類デスモデスムス属のレビュー・感想・評価

フェアウェル(2019年製作の映画)
4.5
装丁家たち


「優しい嘘」みたいな話、そういえば他にもあったんだなと記憶をたどってみても、これほど丁寧、かつ、テンポがよくて面白く、なんだかきもちよかったものを、ぱっとは思いつけない(鈴木家の嘘はおすすめされたけどまだみていない)。嘘だけど非現実ではなくて、自分だったらどうされるのがいいだろう?と考えられるテーマ的な親しみやすさもあったんだろうけど、監督の手腕によるところも大きかったと思う。いちいちキマってたし、装甲車両のように病院から出てくるとことかも、やりすぎじゃなくてバランス感覚がいい。さらに、そうしたスキル的なとこだけじゃなく、物語としての「家族の装い」という意味でもみごたえがある。和田誠が装丁を「小説の包み紙じゃなくて、その小説と拮抗する仕事をしようという意気込みで取り組むんです」というように、みんなキャラクターが茶柱みたいに立ってる家族でつく嘘は、パワフルなおばあちゃんに負けないくらいに気合いが入っていて、いい仕事をしている。いずれも、ナイナイの人生こみこみの「フェアウェル」を飾るに相応しい、みごとな装丁だったと思う。