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フェアウェルのadagietteのレビュー・感想・評価

フェアウェル(2019年製作の映画)
4.5
素人くさいというか 改善できそうな点が多い作品だと思う。
家族関係をベースにしているのだが たくさんいる登場人物の関係がわかりづらい。
場所もあいまい。あのアーチを見れば 長春だって誰もがわかるの?
映像もぺったりしているというかくすんでいるというか。
なによりも音。選曲が安易だし 弦楽やピアノの音質がキンキンする。
can't live without you はなにゆえ イタリア語版なん? 

.........と キズ(?)は数々あれど。
ダイアログの良さと その意図を芯でとらえた演技の確かさで すっごくいい作品になっている!

中国を後にして 米国や日本に渡った名もなき人々。
大人の心もとなさを共有しながらも 小さな子供達は たどり着いた地の文化の中で育つ。
中国は祖国だけれども.....私は米国人、私は日本人、と。

ところが 子供たちも成長するにつれ 自分が中華系であることに改めて向き合わされる。そこにあらわになる何ともしがたい軋轢。

癌を告知するか否か?というテーマは やや古臭く いまさら感を感じてしまったものの 中国と米国 どちらがいいとは言い切れないビリーや親世代のもどかしい心情を描くための背景としては わかりやすい材料なのかもしれない。

また 食卓を挟んで 中国に残った女性(だれ?)と米国に渡った母親がやりあうシーンとか、ホテルの管理人がやたらと米国について聞きたがるシーンとか、なんともリアルで面白くて痛い。
どっちがいいかなんて.......... ほんま 決められんよ........

対比するかのように日本に渡った家族もうまく書き込まれている。
本来主役であるはずなのに ”言葉”の壁ゆえ ひどく控えめに描かれている新郎とそのフィアンセ。
米国から見れば 東洋文化圏で中国に近いはずの日本も やはり中国とは違うのだが 押し黙ったまま笑顔や涙でそっと寄り添う "日本文化”の表現も 嘘くさくなかった。
アイコさん 賢くて良い方だと思ったよ 私は。
でも たぶん 米人さんや中国のゴッドマザーから見たら物足りんのだろう。

ところで ”チャイニーズ・アメリカン 出身地に行く”映画というと クレイジー・リッチ・アジアン の成功を思い出すけれど アレは当事者の中華系にはあまり評判が良くなかったらしい。

その点、 The Farewell は 生真面目な作品。
年寄っても背筋のしゃんと伸びたナイナイと 猫背のオゥクァフィナ。
いろいろあってもとってもとっても相性のいい祖母と孫。
政治的(?)にはギクシャクしている米中だが 人々はこうして繋がっていると訴えかけているようでもある。

政治的にギクシャクすると 民間もそれに歩調を合わせるかのような日本とは違う。それは米国の強さでもあるなぁと思った。
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