いずみたつや

フェアウェルのいずみたつやのレビュー・感想・評価

フェアウェル(2019年製作の映画)
2.8
死との向き合い方の「慣習」についての作品ですが、その異様さをアメリカ育ちの主人公視点からあぶり出し疑問を呈す、という立場を取っているようで、実はそうでもない立ち位置の曖昧さに非常にモヤモヤさせられました。

さらに最後のオチのチグハグ感も問題だと思います(もちろん、事実それ自体は素晴らしいことなのですが!)。劇中では少なくとも主人公は慣習に対して懐疑的に見えたのに、あのオチは一転それが「良いもの」に見える結末になってしまっています。

「良いもの」として描いても全く問題ないですが、主人公が忌避していた慣習を受け入れる過程がきちんと描かれているようには思えません。

作り手の主張が中途半端で「何か言っているようで結局のところ何も言っていない」状態になっているのが、この映画を消化不良に感じる原因ではないでしょうか。

主人公ビリーを演じたオークワフィナはなんとも忘れ難い魅力を放っているし、伯父が思わず感情的になってしまうスピーチ場面は涙なくして見られないし、キャスト陣はそれぞれとても印象的だっただけに残念です。