藻類デスモデスムス属

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコの藻類デスモデスムス属のレビュー・感想・評価

3.5
見逃していたので楽しみにしていたが、あれ、思ったより、というのが正直な感想だった。出来栄えどうこうというよりは、今の自分には思ったより響かなかった。アイデンティティに関する物語と受け止めたが、たぶん、自身のそれが希薄だからだろうと思った。
 
ただ、色を塗りに訪れるあの家、なにかそういったものは、自分にもあったような気がする。所有する家ではなく、誰かの家。もしかしたら自分のでもあるかもしれないが、それはあまり重要ではなく、むしろ「色を塗りに訪れる」ためにその家はあるようだった。もう久しく訪れていない。その家はもう売られてしまっただろうか。
 
はじまりはたしか言葉だったと思うが、言葉もなく友情は終わる。薄情だとけなされても仕方はない。いつも相手任せで、自分から誘うことは一度もなかった。期待の程度を証拠として出されたら、曖昧に笑って頷くしかない。弁解してみようかと時々おもう。色の厚みを、なんて言いだせば、またわけわからんことを、と飽き飽きした様子で冗談めかすとき、少しかっこいい感じになる。厚い顔。正解は明らかだよな、と苦笑する。