爆裂BOX

ホール・イン・ザ・グラウンドの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

3.2
「死霊のはらわた」最新作の監督に抜擢されたリー・クローニン監督の初期作という事で鑑賞。
アイルランド郊外を舞台に、そこに引っ越してきた母子の子供が森で一瞬姿をくらまし、帰ってきた息子が別人なのではないかと疑惑を抱いていくというストーリーになっています。
全編にわたって不穏な雰囲気に包まれたサスペンスホラーですね。帰ってきた息子は本当に別人なのかという所が焦点になっていますが、主人公の母親も髪で隠した額に傷があったり、引っ越してきた理由や夫について語らず、精神的に不安定だと窺わせる描写もあるだけに、精神を病んだ母親による妄想とも感じさせて、どちらに着地するか中々読みづらいのは良いですね。かつて同じような体験をして息子を轢き殺して病んだ老婆も舞台装置としていい味出していたと思います。
森の中にある大きな蟻地獄のような陥没穴も奥深い暗い森と合わさって何処か不気味で幻想的な雰囲気作り出していますね。
ただ、雰囲気を重視したつくりなだけにストーリーの進行が遅く、全体的に冗長な感じを受けます。派手なシーンも殆どなく淡々と進んでいくので盛り上がりに欠ける所もありますね。息子への違和感もパンチが弱く感じられる所はありました。頭だけ地面に埋まっている死体や息子が激昂していきなりテーブル押すシーンはちょっとギョッとさせて良かったですね。
発表会でクラスで合唱する所はみんな笑顔で明るく歌ってるのに何とも言えない不気味さを感じさせて良かったですね。
それまで日常に潜む非日常を薄っすら描いていたのが、終盤一気に火非日常にシフトする所はちょっと唐突に感じられたかな。もうちょっと前振りあっても良かったかも。それまであまりハッキリ映さなかった穴に潜む異形の姿は終盤ちょっとハッキリ映しすぎな気もしますね。あそこまでハッキリ映さずに来たならそれ貫いても良かったかも。足を掴んでいるのが自分の姿になっている所は「いつでもお前に成り代われるんだぞ」と言っているようにも感じられました。一種のボディスナッチャー物と言えるかも。元ネタは「チェンジリング」の御伽噺なんでしょうが。
ラストも部屋中に飾られた鏡が完全に母親の疑惑が解けていない、不安が残ったまま生活を続けているんだと感じさせてその不穏さは良かったです円。
全体通して雰囲気重視で淡々としてて派手なシーンも無いので地味に感じられますが、作品全体覆う不穏な空気は好みでした。DVDスルーになった「死霊のはらわた」最新作でもこの不穏な空気と本作には無かったゴア描写見せてくれるのか楽しみですね。