ねまる

ゲキ×シネ 『髑髏城の七人』 Season風のねまるのレビュー・感想・評価

4.4
ワカドクロで捨・天・蘭の3構図に変わってから、このバージョンで続いていたけれど、
2004年のアオドクロぶりに捨と天を1人二役で演じるバージョンが復活。

主人公捨之助とヴィラン天魔王を一人で演じられる演技力のある役者として選ばれたのが松山ケンイチ。

このバージョンになると思うのは、
捨・天が何もかもの中心となること。
だからこそ、演じる役者の技術も器量も必要になる。

話の展開はこの設定でもともと作られていたからこそスムーズで、
3構図との違いを新鮮に楽しめた!


☆捨之助・天魔王as松山ケンイチ
松山ケンイチへの圧倒的安心感はなんだろう。静も動も、善人も変人もなり切れる役者。
天魔王を狂人に演じる役者が多い中で、静で天魔王に挑んだところがすごい。
静かなのにある怖さと迫力。
捨之助を優しさとユーモアのある軽い存在として演じているからこそ、対比が素晴らしかった。
捨之助は誰が演じるよりもかっこよくて、リアルに惚れてしまう役。
殺陣ではなく、カポエラを取り入れた足技をするというのも、一番過去を捨てられている捨之助だと思った。
同じ顔をしているばかりに引き戻されてしまうという感じがした。
古田さんを置いておいたら、正解の捨之助だなと思いました。

☆蘭兵衛as向井理
無界屋の向井さん。
捨之助と天魔王が一人二役になると、どうしても霞がちな蘭兵衛。
お顔が小さくて、美しい蘭兵衛だったけど、やっぱり向井理というネームの割に薄かったかなぁ。自分の色の出し方を見失っている感じ。
前が鳥の早乙女太一だからしょうがないと言うけれど、ちょっと残念。
無界屋襲撃のシーンはWOWOW版でも編集もかっこよく、背の高い二人が映えていましたね。

☆兵庫as山内圭哉
兵庫なんだけど、紛れもなく山内圭哉なの。そういうところがベテランの本領を感じました。
兵庫って、真っ直ぐで熱い男なんだけど、まぁ面白い奴で、ボケ担当なところもある。
ちゃんとかっこよさは残しつつも、自分のテイストで笑いを取っていくところが良かったです。

☆極楽太夫as田中麗奈
極楽太夫って、強い女性によって演じられることが多くて、でも田中麗奈が演じると強さよりも可憐さが残る。
か弱いけど、頑張って強い女であろうとしている感じ。
だから、強い女性が惹かれる蘭との愛は弱めなんだと思う。仕事の仲間として信頼はしているけど、それは愛ではないのかな。
ちょっと無理して頑張るところが、この太夫は良かったけど、蘭の最期絡みが弱くなってしまうのは仕方ないね。

☆沙霧as岸井ゆきの
岸井ゆきのの沙霧は幼さと可愛さに溢れていて、守られる者であったのが良かった。
沙霧は自分でなんとかする!って思っているとことか、ちょっと反抗期な面もあったりするんだけど、この沙霧はみんなが守ってあげたくなる素直な子。
河野さんの三五が、捨に沙霧を守るよう頼まれて以降、常に沙霧を気にかけて、沙霧の前に立って可愛かったー。
松ケンの捨とのバランスも本当に可愛すぎて、捨との恋愛描写にキュンキュンした。
沙霧が可愛いから余計松ケン捨がかっこよく見える。
動き回って、強い子も良いけど、岸井ゆきのちゃんにはこの沙霧で良かった。

☆贋鉄斎as橋本じゅん
松山ケンイチの時の贋鉄斎に橋本じゅんを持ってきているところが最高。
中島脚本で何度か絡みのある二人のコンビネーションは抜群。
100人切りの蕎麦屋とやってる?の信頼を見せられたら、役者同士の信頼関係が役に染み出しているようだった。
ずっと昔から捨と贋鉄に信頼があったことが言わずとも分かる。
捨・天を1人で演じている松ケンはもちろん、風は自分のキャラを生かしているキャストか多くて、じゅんさんもその1人だった。
黒馬騎とLはズルですよ、じゅんさん。

☆狸穴次郎衛門as生瀬勝久
生瀬さん、山内さん、じゅんさん。風はこの辺が上手いんだよなぁ。
もともとある役と自分のキャラクターとの兼ね合いが。
生瀬さんの持つコミカルさを、活かすためのシーンも追加されていたり、一言アドリブで足してそうなボケも面白かった。
劇団☆新感線において、笑いは不可欠なものなんだよね。
笑いを取れる役者がちゃんと笑いを取ってくれていることで、他の役者が演じやすい空間を作っているようでした。


髑髏城の七人がこれ1本ならば、解釈違いも多いかなという作品なんだけど、
花鳥風月の1本として、何度も再演されている作品の1つとしては楽しめる作品でした!
ねまる

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