ねまる

ゲキ×シネ 『髑髏城の七人』 Season月《上弦の月》のねまるのレビュー・感想・評価

4.1
役者の素の素質で、真っ直ぐにぶつかっていて、まとまりの無い凸凹髑髏。

その凸凹の奇妙な歪みが、生み出してしまった奇跡的なバランス。
よくそこで保ってるなっていう。

ゲキシネも、WOWOWも同じ日だけど、違う日の回を観たら全く違うものが観れたんだと思う。

毎回これじゃいけないと、髑髏のベテラン早乙女太一の楽屋に集まって議論した、その努力と汗の結晶が奇妙な歪みを崩れず保たせたんだろう。

まとまりのなさはそれぞれのキャラクター、誰視点になってしまっても楽しめる個性になっている。

だけど、わたしには天魔王しか見えない。上弦の月は、彼抜きには語れない。
私の上弦は、天魔王が主人公…

彼が人の男と呼ばれた少年が、
天魔の鎧を纏って、天魔王となってから、登り、そして堕ちていく物語。
どんなに望めど、得られない。
殿の愛も得られなければ、天魔の遺志を継ぐことも出来なかったと悟るまでのお話だ。

これまでは主役順に書いたけど、私が観た上弦の主役順はこれだったと思う順で書こうか。
(これだけ再演されてりゃ、ネタバレもクソも無いと思うが気をつけてね)

☆天魔王:早乙女太一
私は全髑髏で、1番鳥髑髏を愛しているし、鳥蘭が1番好きなキャラクターだ。全部観たからようやく言えるさ。
だけど、役者早乙女太一が本当に最高だったの。
言いたいこと、伝わる?
天魔王のキャラとしてだったらもっと他に好きな天はいるけど、
この上弦の月の歪みの中で、天をこう解釈して、自分なりの天を作り出した役者を評価したいんです。

こういうキャラの福士蒼汰も知ってるし、こういうキャラの三浦翔平も知ってる。
じゃあ自分はどうするか?

若い捨之介にやられる天魔王なら、もっと弱くなくてはいけない。
弱い天にしよう、これは有名な話。

そこで終わらせず、本当は弱い真の自分を仮面で隠して、葛藤しながらなんとか立っているところまで、台詞は同じなのに表情だけで演じてみせる器用さよ。
一つ一つの仕草まで、そんなの舞台で見えるのか?ってとこまでパーフェクト。

みうらんがドライだから、鳥蘭のようなエモーショナルな感情が天魔王に注ぎ込まれている。

そのバランス加減めっちゃ頑張ったよね?
天がああきてるから、蘭がドライなんだと言う人いるけど、違うよね?
真っ正面で、いつもの役で演じてきている人達ばかりだから、
めちゃめちゃバランスを観て考えて生まれた天だというのがよーく分かる。

みんなの相談役というポジションが役に出ているよね。

ね!分かるでしょ!
蘭のドライでヤンキーさがいいのは、エモを捨と天が背負ってるからでしょ?
捨の青さが光るのは弱い天との戦いありきでしょ。

心の底から、役者早乙女太一に惚れ直しました。
鳥蘭という役だけじゃない。
演技力に脱帽だよ。お疲れ様。太一くん。


☆捨之介:福士蒼汰
天魔王をいくら褒めようと、天魔王1人で成り立つ舞台ではございません。

天魔王の野望を妨げる奴がいるんです。
「倒すんじゃねえ、止めるんだ」
とかなんとか言って、天魔王がどうして必死に立てているのかも分かっちゃいない。

最初はこの青さとかっこつけの笑顔が良くないと思っていたんですが、
天魔王を救えなかった叫びまで聞くと腑に落ちるのです。

この青さを貫き通した福士蒼汰、天魔王との共存においてならアリかなって。

それからこれは、福士蒼汰がというより脚本が上手いなと思ったのは霧丸との比較。霧丸の方に書こう。

涙雨に傘を差す男のくだりも好きでした。

役者に当て書きが基本の髑髏城だけど、今回はWキャストということもあってホンが決まっている。

とにかく福士蒼汰らしく真っ直ぐ演じている姿に母性が芽生えました。
頑張れ。

☆兵庫:須賀健太
兵庫のプレッシャーに負けずに頑張った!
よく頑張ったで賞!!
山内さんや福田さんのように実力で笑いと見せ場を作る兵庫も好きだけど、
この真っ直ぐで直球さがあって、そこが魅力を正面から演じてる須賀くんには好印象しかありません。

これはもう純粋に脚本に書いてある兵庫を120%で演じている良さ。
私に須賀くんの色がそんなに無いからか、高田太夫との絡みだからか、枠組みをなんとか支えるベテラン陣のような安定感があった。

マイ髑髏を作る時、早乙女蘭から発すると
強い女がどうしても見惚れてしまっている感じの松雪さんをおいてしまうので、ここに須賀兵庫は入れられないけれども、好きというより正解な兵庫だったなって。じゅんさんが殿堂入りだけど、かなり好みな兵庫でした。
だからこの位置3番手。

☆極楽太夫:高田聖子
聖子さんをここに入れたことがベスト。
舞台が初めての福士&三浦の不安定さを支えられるし、髑髏城の七人には絶対に必要な笑いを安定して届けられる人。

かつ、太夫としての品格は損なわず、みんなを束ねる強さを持った人。
顔面以上にああ綺麗だなと思わされる。

関係図を引くとしたら、蘭との線が薄いのが他の髑髏との違い。
鳥>花>風>月、の順だね。蘭との愛情>>>友情の流れは。

テイッー♪♪

☆小田切渡京:粟根まこと
安定の笑い。

新感線に染まっていないキャストの中で、
エモパートを引き受けた準劇団員早乙女太一と
安定と笑いパートを引き受けた劇団員高田聖子、粟根まこと、渡辺いっけい。
ンなとこでしょうね。
細かくいうと、山本カナコさんが上を支えていたり、村木仁さんだったり、安田桃太郎さんあたりも下のパートを支えていたりするんですが。

劇団員なんだから、もっと作品を支えてやれよーって思ったこともあったんだけど、
この安定が何よりも大事だったと思い知らされました。

いつもながらに最高です。この胡散臭さ。
ゲキシネでもウケてましたよ。

☆蘭兵衛:三浦翔平
忘れていたわけではない。
思った通りの主役順。
主役のように輝いて見えた順。

上弦の三浦ん推しが多くてびっくりしているが、私の目の前にはまだ鳥の蘭が舞っているので、
蘭兵衛の時はドライに、蘭丸の時は潔く悪に染まる姿につまんないと思ってしまった。

もはや最後の方恐怖でしたよ?

向井蘭の時に、背景設定のしての蘭って話があって。早乙女太一がワカドクロで蘭をやる時に設定がモリモリになった。
それまでは物語を進める駒の一つでしかなかったんだとか。

多分、その蘭。
ある意味正解の蘭。天と捨が二極の構成でその狭間で動くというポジション。
太一くんの蘭が、蘭だという共通の認識のもと、エモな蘭を求めているだけ。

上弦では私にとっては、その背景設定に成り下がっている。ここでいい。

ただひとつだけ、
ゲキシネはみうらんのアップがずるいくらいに美味しい。

☆霧丸:平間壮一
女の子から男の子へのキャストチェンジ。
この辺は役者というより脚本の巧さです、後ほど。

平間さんはアクロが出来るそうで、やっぱり髑髏城は立ち回りだよねー。華麗でした。

脚本の方に行くと、
根は光だけど過去に囚われて必死に闇に向かってる霧丸が、
根は闇だけど過去から解放されようと必死に光に向かってる捨之助と出会って、
捨は闇に向かう霧を光に向かわせようと、霧は捨の隠した闇を照らそうとしている
んだと思います。

その描き方が上手でした。
(同じ文で送ったメールの相手が見ていませんように)

この設定だからこそ、元が光の霧丸だから、闇抱えてても真っ直ぐで演じられるんだろうなって。

☆狸穴次郎右衛門:渡辺いっけい
粟根渡京のとこで書いたけど、安定。
元劇団員だもんね。

狸穴さんやったの初めてだと思うんだけど、ちゃんと物語を進める安定さと自分の持っている笑いを感じた。
安心出来ますな。

なんだろう、上弦はこんなにも、安定を求めているのです。

自分で書いたこの文章の長さに、上弦すきなんじゃんと自覚をさせられた日
ねまる

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