ねまる

ゲキ×シネ 『髑髏城の七人』 Season月《下弦の月》のねまるのレビュー・感想・評価

4.0
上弦の時は、あ、このドクロは、天魔王が鎧を着て、剥がされる物語なんだなって思ったのに、
今回下弦を見て、あ、このドクロは、一族殺された霧丸が復讐を止めて明日を向く話なんだなって思った。

上弦の時も書いたけど、
初めは復讐に取り憑かれた霧丸に、捨之介が傘を差し、後半は何も捨てられていない捨之介を霧丸がなんとかこっちに戻そうとする。
この2人の関係にフューチャーしてたんだな。
その上に最初、兵庫や極楽、渡京あたりまで仲間になる理由が、しょうがねえこの生意気なボーイ、霧丸くんを守ってやっか!みたいなところでまとまっていく感じも実にスムーズ。
そこに松岡広大(NARUTOのナルト)の主役力が乗っかったことで、霧丸が影の主役になった。

だから月は、捨之介が失敗する話と言うけれど、
一度全てを捨てた捨之介が、霧丸や兵庫などの仲間を見つける話として希望ある話に感じられる。

上弦同様、主役に感じた順にしてみたけど、こちらはそんなに差が無い気もする。

☆霧丸: 松岡広大(20歳?!)
若気の至り、髑髏といえど、下弦は周りがみんな10歳以上年上なお兄さんたちなので、圧倒的に世話が焼けるが可愛い弟感が抜群で、新感線は主人公が光、2枚目が影が多いので、捨の根が影だとどうしても光の霧丸が引っ張ることになる。
体は小さいけれど、誰よりも動きは大きく、声は張り存在感が抜群だった。
天魔王が蘭兵衛を誘惑するシーンも、割と早めに介入するので見ているし、捨が天を倒すシーンも舞台の端で見ている。大事な場面に同席してる。
100人斬りも、捨の相棒になるので、身体能力の高さが発揮されていて楽しいシーンでした。
松岡くんといえば、あのスマイルなので、
髑髏城脱出後、元の生意気に戻ってニコニコしてるのが嬉しくなったし、舞台を締めくくる一言「もう決めたんだ!」の後がニコッってスマイルだったのが嬉しすぎて泣きました。

☆狸穴次郎右衛門:千葉哲也
ワカぶりの千葉さん。
大きな個性がある訳ではないんだけど、狸穴は浪人ぶるシーンの中にも冷徹な怖さみたいのがあるところが良いと思っている。いずれ天下を取る男なので、あまりひょうきんでは困ると思うんだよね。
無界屋襲撃後、取り乱すところも、ふざけてなかったんだ本気だったんだ、というより怖い男の人間らしい姿として心打たれる。
金500枚のくだりの大笑いも器のデカさを感じさせるそれでよかったと思います。

☆天魔王:鈴木拡樹
上弦がアレなので、私は比較してしまうのを許してほしいのですが、月脚本の中から、早乙女要素を引き算して引き算して、血の通っていない天として存在したのは正解だったと思う。
上弦はよわっちい人間だったけど、こっちは人間みが無くて妖怪のようだった。
稽古中やオフシーン、メイクをしていない時の人と同じ人だと思えなくてびっくりした。

☆兵庫:木村了
え、この人初めてですか?ってくらいの安定感。
上弦の須賀健太と高田聖子ほどの年齢差を感じさせないけれど、下弦の中では年下の方だったんだね。
兵庫の中のみんなをほっとさせる安心感。細かいところの上手い下手より、存在が新感線。

☆蘭兵衛: 廣瀬智紀
あざといなぁー。月は、蘭はサイコパスな蘭丸が状態で、蘭兵衛は感情を無くしているようにすら見える。
だから、蘭丸に戻った後のあざとさがすごい。飲み終わった夢見酒の器にキスするのはずるいよ。
無界屋襲撃が1番楽しそうで、恍惚な表情を浮かべているのが印象的。

☆捨之介: 宮野真守
1番顔がでかい捨と書いてる人がいて笑った。
私的には1番顔がうるさい。
だからか、そんなに陰を感じなかったかな。
天を救えなかった時の絶望は福士の勝ち。
だけど、全体的な空気を軽くする、新感線らしさみたいなものは、劇団員も、準劇団員もいない中で、座長として頑張っていたと思う。

☆極楽太夫: 羽野晶紀
超ワカドクロの極楽は完全にママポジション。
だからこそみんなを暖かく見守る元祖極楽2人。

☆小田切渡京: 伊達暁
この役をサンボさん粟根さん以外が演じるの初めてじゃない?
渡京という作られたキャラクターを演じているんだからそうなんだけど、粟根さんやサンボさんより顔がうるさくて、髪型も相まって新たなキャラクターとしてちゃんと確立してるのがすごい。
ただどうしても、おまけキャラにはなっちゃうよね。
ねまる

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