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もみの家のjamのレビュー・感想・評価

もみの家(2019年製作の映画)
4.0
生きていく
自分の力で
けれど、決して人は独りでは生きてはいけない

彩花がどうして不登校になったのか
それはこの作品で触れることはなかったけれど
その硬く結んだ口元
伏せた眼差し
強張った肩のラインを観て
ああ、これをほぐすのは大変かも…と思い


人一倍寂しいのに
干渉してくる大人に素直になれない
思春期に経験したことがある人は多いんじゃないかしら


砺波の鮮やかな四季
富山のお隣で暮らした時期もあったけれど
いつも電車で通過するだけ
先日葉書をいただいた恩師は定年後に
砺波のご実家に足繁く通って農業を手伝っているという


田んぼの泥の"洗礼"を受けた彩花に
「どうしたがけ?
 えらかったねぇ
 泣かんでええがよ」
自身も家族と離れて暮らすハナエさんが
優しく話しかけるその方言に
私の好きな北陸のあたたかい響きを想い出して
泣きそうになる


彩花が求めて、けれど戸惑っていた触れ合い
ハナエさんは彩花の心の垣根をヒョイと越えて


いろんな人に会って
信じられるものを少しずつ増やしていけばいいやないか?
"もみの家"…稲を覆う殻を破って欲しいという願いを込めて命名した、泰利さんが彩花を見守る


自分の力で作物を育てて
仲間と共に獅子舞の練習に打ち込み
恵さんから生命の誕生の神秘と母の愛を学んで

俯いていた彩花が
顔を上げて自転車をこぐ
桜の花が祝福するようで

"私は元気です"
宅配便の伝票に添えたメッセージ
少しずつ大人になっていく
生きることを学びながら



彩花が心を寄せたハナエさんを演じたのは
昨年亡くなられた佐々木すみ江さん
気づけばたくさんの映像作品で
可愛かったり少し怖かったりする
日本のおばあちゃんとして存在されていた


この映画で見納めかな…
ほんとうにありがとうございました。

腰が曲がってきた、そう言う恩師の
柔らかい北陸の言葉を聴きに行こうかな
「来まっしね」
きっと、そう言ってくれる…
jam

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