クリストファー・ノーラン監督脚本作品。
世界大戦阻止のための謎組織"TENET”にスカウトされた主人公が、時間の逆行を利用した戦いに身を投じ、世界の破滅を目論む敵を止めるSFアクション。
ベースにあるモチーフ（世界の破滅を止めるスパイアクション）自体はシンプルなはずなのに、時間の逆行を扱っているがゆえに「原因と結果の逆転」という見せ方により、とんでもなく独特で複雑な作品。その映像表現が魅力であると同時に格段に難解になっているという、まさにノーラン作品。ただ難解ではあるものの、作中の「考えるな、感じろ」というセリフ通り、「なんか分からないけど面白い！かっこいい！」という感覚にさせてくれるのはさすが。エンタメとして優れている証だと思います。
過去作「メメント」よろしく、中盤まで情報が多い割に説明を省いた表現で面食らいますが、その後にその結果に至った原因が語られるため、伏線回収のような快感がありました。映画でなければできない順行と逆行が入り乱れる表現は、最高の映像体験でした。（ただそれでも「時間の挟撃」は分かりにくすぎる笑）
最後に明かされる、ある種の友情ものとしての帰着も、これだけ難解な戦い（観る側にとっても）を乗り越えた先の、スッキリしたラストだったと思います。誰もが共感できて、そして少しせつない、これまでのノーラン作品にときどきある、魅力的なものでした。
難解ではありますが、スパイアクションとして観れば、ちゃんと楽しめて、そしてもう一度観たくなる、最高にエンタメをしている作品でした。
