このレビューはネタバレを含みます
まず第一に、面白かった。もちろんinteresting の方。あと、3回観た。2回で分かる？3回でもよくわかんないんだが。
というわけでもいっかい観るかもだけど、一旦ここまでのメモ。
ノーラン監督と「時間」モノ。『インターステラー』では宇宙に飛び出した。時間と次元とか、そういう違和感は、「宇宙」という無限の空間的な広がりが、イコール無限の可能性となって認めさせてくれた。
では今作の「逆行」に無理はなかったか？
→もちろん突拍子もない設定。
ここで今作の「逆行」について。「エントロピーの減少」…。要するに、ここでいう逆行とは、一時的な時間旅行（＝タイムトラベル）ではなく、時間を「逆転」させるもの。大富豪のイレブンバック（あるいは革命？）とか、ハリポタ3の逆転時計的な。
順行ー（逆転）→逆行ー（逆転）→順行
という風に、「何かしないと戻り続ける」タイプの時間移動。
では逆行し続けたらどうなる？未来に「ある不都合」があるならそれって都合が良いのでは？というロジックが生まれるのも納得。
それに、未来の（厳密には1度目の逆転を起こした）人間が起点となる以上、その未知性が『インターステラー』の「宇宙」同様、設定に対してある種の諦めを持たせてくれた。
これって、次元の複層性というか、多次元宇宙みたいな『インターステラー』の世界観と対立しちゃうのでは？
それに、さらに比較するなら、相対性理論に基づいて「時間は伸びたり縮んだりするが決して戻らない」『インターステラー』に対して、『TENET』では「逆行するがある確定した時間の流れを行き来するに過ぎない」。
自分が入るところを見ないと、出てこれない。「見る」ことで存在・行動を「確定」させる。量子論的な意識が面白い。人間の認識を疑いながらも、人間の認識に依る「確認動作」。結局人は、自己肯定を続けて存在してるのだろうか？循環論法。
ー大丈夫。病んでるわけじゃない。ー
それから仮に、「見た（見てしまった）」ことで未来が「確定」したとして、じゃあ今何か思ったり、頑張ったり、傷ついたりすることは無意味なのか？全て予定調和なのか？
また今作にせよ『インターステラー』にせよ、地球の未来を見限る視点が面白い。地球という空間にとどまるか否かの差こそあれ、実に救いようのない星だなぁと。
まとめ
ほとんど脈絡のなかったメモだけれど、暫定的にまとめてみよう。
この作品の出来事は「人類滅亡未遂」の「戦争」だった。古今東西あらゆる争いは、戦争から痴話喧嘩まで、意見の食い違いからくるもので、今回は「過去の改変が現在現実に影響を与える可能性があるため、世界全体の逆行という過去人類の軽視は現代人類にとってもあまりに危険」vs 「そもそも過去の改変が現在現実に影響を及ぼすかは定かではないし、未来に光がない以上、それも仕方がない、また後世などさして重要ではない」。
言うまでもなく、後者は完全な悪役だったわけだが、ただ極論が過ぎるだけで筋が通っている。
さて今回は単に「逆行」だったが、何かの拍子にずっと先の未来を知れて、それが地球爆発とかだったとしよう。じゃあこのタイミングで人類が滅ぶのと何が違うの？「未来」が持つ危うさはそこにある。
ルール、「逆行するときには自分が出てきていることを視認すること。」自分が出てきたとはつまり出てこれたということ。それを見てないということは、出てきていないかも知れないということ。じゃあ見ないと。
つまり裏を返せば、「視認」という行為が未来を確定する、という気持ち悪い出来事が起こる。いや出来事そのものは気持ち悪くない。当然のことが起こったんだけれど、因果関係がおかしい。「起こったから見える」のが本来で、今のは「見たから起こった」。TENETの世界にあるすべての違和感はここに集約されるんだと思う。
随分たくさん書いたんだが実はまだまだここから。では以上のことが、なぜ映像作品に？？
さあ…。
でも、『インターステラー』よろしく、小難しい科学（？）に隠されてはいるものの、人間の認識や心が物語で起こるアノマリーの直接的な材料になっているのは上で何度も触れた通り。個人的にノーラン作品では一貫して、世界がニュートラルな物質のように描かれているように思う。それが毎度、人間の手によってはちゃめちゃにされるのだが。それでもやはり、世界を再生しうる存在というのも人間を置いて他にいないのだろう。そういう意味ですごく道徳的、あるいは少し棘のある言い方をすると、楽観的・希望観測的な作品（群）なのかもしれない。
SATOR
AREPO
TENET（信条）
OPERA
ROTAS
回文・挟撃・10・
