ダンクシー

TENET テネットのダンクシーのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.2
「あのドアを越えたら後悔するぞ」

ノーラン映画で最も難解な映画。
本作は、時間の逆行がテーマ。普通、銃撃が起きて銃撃痕ができる、というように原因があって結果が生じる。しかし本作では、銃撃痕が残っている→直後に銃撃戦が起きる、車が横転している→元の状態に戻っていく。というように、原因と結果の順序が完全に逆。因果関係が逆に発生する世界という訳です。逆再生みたいな時間の逆行。さらに面白いのが、逆行と通常の時間の流れがひとつの画面で同時に交わるという事。誰も観たことのない超新感覚の映像体験。

1回の鑑賞でこの映画を理解出来るなんて100%ありえない。もし居るとしたらそいつは何も理解していないでしょう。自分は何回も観ましたが完全に理解できるまでに至ってません。でも、アクション満載でものすごく面白いし、2度目以降の鑑賞の方がもっと面白い!

ウクライナ・キエフのオペラハウスでテロ事件が発生。特殊部隊に偽装し突入したCIA工作員の"名もなき男"は、後にロシア人たちに捕らえらてしまうが、今回のテロと対処任務自体が主人公の適性をはかるテストだったことが明かされる。そして彼は第三次世界大戦を阻止する為の謎の組織TENETにスカウトされる。主人公はある研究室へ案内され、そこで弾痕から拳銃の中へ"逆行する弾丸"の存在を知る。これこそが時間の逆行。通常時間軸である現在の兵器が未来を変えるように、未来からもたらされた逆行する兵器は過去を変えるという。果たして彼は未来の敵と闘い第三次世界大戦を防ぐことが出来るのか...。

本作は、時間の順行と逆行の2つの視点が同時に描写されるため混乱する・逆行の演出は違和感が大きいので全て感覚で捉えないと困惑してしまう・当たり前のように話が進むので分かりやすいような説明が省かれている、といった点が難解とたらしめる要因だと思います。考えようとすると余計「あれ?」ってなってしまう。まぁそれが斬新で楽しいんですけどね笑

時間の逆行と通常の流れが圧倒的な映像で、大音量の迫力のある音楽が加わって最高峰のアクションエンタメがここに誕生した。リアルを追求するクリストファー・ノーラン。今回もCGを使いません。IMAXを駆使し、背景もグリーンバックではなく全て現地で撮影し、カーチェイスも、爆発も、飛行機がビルに突っ込むシーンも、まさかの全て本物!全員が一体となってリアルに情熱を注ぐ。だからこそ釘付けになる。そこに嘘は無いから。このこだわりがより一層奥深いものへと昇華する。ほかの監督も見習って欲しい。

逆行装置では順行が赤、逆行が青で表示されるのも視覚的に分かりやすいし対となる色なのでシンプルだけど良くできている。
先に結果が示され、その後に原因が生じるという世界線。だから過去の自分達をより良い現在に導く事が出来る。意外とシンプルなアイデアですが、これを映像として表現するのは超一流の至難の業だと思う。ほかの人なら思いついたとしても断念するかCGに頼るかの二択でしょう。つまり、この映画を撮れる人間は地球上にクリストファー・ノーランただ1人なのです!
できる限り多くの人に唯一無二のこの作品を、存分に味わって欲しい。。。
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