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TENET テネットのatomaのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
3.5
『メメント』スクリーン鑑賞からの流れでアマプラ鑑賞。
語りの時系列を入れ替える手法(anachrony)を好んで採用してきたクリストファー・ノーランが満を辞して、(主人公から見た)出来事の時系列そのものに順行と逆行を導入した意欲作。なのだけど、物語のレベルではアイデアの消化不良を起こしているように感じた。

空港の倉庫でのアクション、逆走カーチェイスシーン、クライマックスの戦場のシーンなど、順行アクションと逆行アクションが入り乱れるシーンは、なるほど「こんな映像は観たことがない」と思わせるに十分なインパクトがある。
しかし、それらのアクションがどのように各シーンの目的に貢献しているのかよくわからない。多くの人が指摘してる通り、ノーランって説明が上手くないのだと思う。(複雑な話が好きな割に交通整理がいまいちで、アクションシーンのモチベーションが行方不明になりがちな監督っている。ジョン・ウーとか)

さらに言えば、何が起こっているのか理解できない部分はいくつもあったけど、では、この映画を繰り返し観て何が起こったのかを完全に理解したとして、それで「アハッ」となるだろうか。多分ならないんじゃないか? 正直、深いレベルで物語の辻褄が合っていると思えない。

面白いアイデアのアクションとゴージャスなロケーション、飛行機を一台使ったあのシーンなど、見世物映画としては現代の最高峰でありながら、なぜか映画的カタルシスには至れない。ある意味、ノーランの作家性が遺憾なく発揮された一本ではなかったか。

以下はメモ。
嬉しかった点。昔、観光したことのあるタリンの海沿いの廃墟が、何だか小綺麗になって爆破されてたこと。

嫌だった点。キャサリンというキャラクターのしょうもなさ。女が嫌いなら映画に出さなきゃいいのに。

『カサブランカ』の取ってつけたような引用は好きでも嫌いでもない。

もう一点。これは映画とはあまり関係ない思い出話だけど、公開当時、本作の物理学風フレーバーについて息急き切って喋る人たちがたくさんいて、この人たち、90年代だと『もののけ姫』を肴に網野善彦の話ばっかしてたんだろうな、と思ってた。(24/4/25)
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