高山佑貴

TENET テネットの高山佑貴のレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
2.0
「逆再生」とは映像に付属したファンタジーであり、それは運動の「本質」ではない。
運動とは「進む」わけではなく、ましてや戻るわけもない。運動とはただただ「行われる」ものである。

だからこの映画のテーマは、逆再生という映像のファンタジーに入り込み、その逆の運動に正の運動が影響を受けることでしかない。またその逆もしかり。
にもかかわらず、この映画は逆再生という運動による運動の影響をうまく伝えていない。

話は重要ではない。というか話などない。
この映画はただ単に映像が逆行し、「進む⇄戻る」という運動と運動のうっすらとした影響のファンタジーが画面に映るだけである。
だから我々は一連の運動のダイナミズムをファンタジーとして享受すればよいだけなのだが、そのようにはこの映画はつくられていない。

テネットは-1倍速度だが、この映画は1.3倍速度ぐらいである。到底そのようなスピードではテネットという装置を楽しむことはできないだろう。アイディア(装置)だけが開発され、この物語のように使い方を誤っている。
この映画は通常通り撮ってはいけない。あまりにも丁寧な運動の検証と配慮が必要である。
逆再生が「当たる」とはなんなのかということを考えるのはノーランには不可能だったのかもしれない。


インターステラーもそうだが、相変わらずファンタジーしか描かない。話はセカイ系だ。
この映画は失敗作だ。たぶん通常のノーラン作より売れないだろう。
単純にテーマを映像が表現できていないだけなのを、難解な映画であると言われないことを祈るばかりである。ノーランで難解な映画なんて一本もない。とても単純なファンタジー映画監督である。
なんか楽しめなかった?それはノーラン映画のハズレである。