ケンタロー

TENET テネットのケンタローのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.0
ノーラン節炸裂! 終盤、激しい尿意を逆行させたくてたまらんかった2時間30分 … ヘ( ´Д`)ノ≡≡3 🚻

っていうのは冗談じゃなくてホントなんだけど…。でもね、実に濃密な2時間30分であった!

やはりノーラン監督作品は素晴らしい!んだけど、個人的にノーラン監督のSFっつーのは、サイエンス・フィクションの略に非ず、ドS・フィルムメーカーの略だと思ってる(笑)

そんくらい突き放してくるわけですよ、展開は速いし、説明は少ないし、複雑だし…。コレを私はノーラン節と呼んでおります(^_^;)
ただ、このわからなさ過ぎ具合が心地良いんだよねぇ…。もう完全にマゾ開発されとるよね?(笑)

2度、3度観ても楽しめる(そんくらい観ないと理解が追いつかない)映像的仕掛けと伏線、どうしたらこんなにユニークで独創性に富んだシナリオが書けて映像化出来てしまうのか…!?

さて、そんな複雑な設定や理論、そして、映画的な仕掛けについては多くの方がレビューや解説を寄せてらっしゃるので、その辺には触れずに『TENET』を観て、率直に感じたままのことだけを纏めようと思う。劇中でも「理解しようとしないで、感じて」って言ってたし(笑)

観ながらずっと考えていたのは、" 冷戦 " と " 因果応報 " という言葉。

『TENET』は冷戦の負の遺産として残った核兵器やプルトニウムが発端となって物語がはじまる。さて、今、世界に於いて核兵器を保有している国はいったいどれくらいあるのだろうか??

アメリカ、ロシアは軍縮が進んでもなお、4,000発以上の核兵器を保有し、他にも中国、イギリス、フランス、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮といった国々が保有している…。ひょっとしたら秘密裏に隠し持っている国だってあるのかもしれない。

アメリカと旧ソ連がバチバチにやり合ってた70年代が冷戦ピーク期と言うけれど、いやいや、今だって予断の許されぬ状況な訳で、想像するに各国、凄まじい情報戦と諜報活動を繰り広げているに違いないのだ。すなわち、冷戦なんてものは終わるハズが無くて、じゃ、いったい今は第何次世界冷戦なんだ!?っつーね(^_^;)

こーして、諸国が利権と覇権を握るために長い年月をかけ、ひたすら疑心暗鬼に陥っている。疑う心が恐怖と怒りを生み、敵を作る…。この無限ループは実在しない姿無き敵すらも産み出す始末で、仮想敵は妄想敵に。妄想敵は捏造敵になってすらいる…。まさに " 因果応報 "

『TENET』の物語が進行する中で漠然と抱える不安は、名前すら語られることの無い主人公(protagonist)を始め、素性の知れぬ登場人物たちがはたして敵なのか味方なのか?善なのか悪なのか?わからない部分にある。
他者が理解出来ない、そして、自分すらも理解出来ない不穏な世界。

それって、まさに今の世の中なんだと思う…。

いろいろな事柄で、分離・分断は加速している。「他者」と「自分」、国・人種・民族・宗教、先に挙げた冷戦に代表されるような【理解の出来る】分離・分断だけではなく「自分自身の中」で生じる分離・分断は無いか?

ネット社会とSNSの発達の弊害なのか、匿名という防護服に身を包みつつ、他者を攻撃する二面性を持つ人が世界で多く見受けられるようになっている。自分自身の中、心の分離・分断が生じていやしないか???

『TENET』を観終えて思ったのは、" 今 " がある以上、過去も未来も等しく " あり続ける " わけで、それ自体は至ってフラットで平等なのだ。過去について良かったとか悪かったとか、過去を省みること自体は大切なことだけど「起きてしまったことは仕方が無い」のである。

ノーラン監督が言いたいのは、" 今 " の判断を誤らないためにも「自分自身の中心」をしっかり保て!
善悪を見誤ることなく、他者や世界に向き合え!
信条(TENET)を心に刻んでほしいという警笛だったのではないだろうか?

そして、皮肉にも今、人類は核兵器や外敵でも無く、自身の内なる敵でも無く、未だかつてない未知の新型コロナウィルスによって、その生存が脅かされているのだ…。そう、未来に対しては誰もが無知なんだよ。

えー、長々と書き綴りましたが、一言で表わせよ!って言われたら、(゜゜)ウーン「高尚なターミネーター」かな…。ぜんぜん違うけど(笑)