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TENET テネットのすずすのネタバレレビュー・内容・結末

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

『インセプション』に続く、クリストファー・ノーラン監督のマジック映像ムービー。時間を巻き戻すタイムトラベルの能力を有し、世界の破滅を企てる武器商人と、彼の悪事を阻止する《主人公》のジェームスボンドばりのサスペンス・アクション。近過去へのタイムトラベル(逆行)を体感するかの様な斬新な映像手法で描く、前代未聞の冒険活劇だ。

映画の見所は、①逆行する世界に抗って進む、アトラクション体感的な魅力、②イタリアのアマルフィ、ロンドン、エストニア、デンマーク、ノルウェーなど欧州を巡る壮大なロケーション、③ヘップバーンを大きくした様な美人女優など、流石にノーラン監督、展開の速い冒険譚に加え、並み映画とは一味も二味も違う、一級のアクション活劇も堪能出来る。

ロシアのコンサートホール、要人警護の主人公(日本の配給会社は「名もなき男」と称しているが、ここはエンドクレジットにあるように「主人公(Protagonist)」と称すべき。理由は後述)はテロ一味に狙撃されるが、その瞬間、誰かが何かをして、難を逃れる。その直後、主人公は組織に呼び出され、時間を逆行(タイムトラベル)する方法を教えられる。そして、時間逆行の秘密を握るインドの商人に会い、情報を入手する作戦にむかう。同じ組織の二ールと共に、ビルの屋上からロープをツタって部屋に侵入。武器商人のプリヤから、ロシア人の武器商人セイタ―が秘密を握っている事を突きとめ、セイタ―の美人の妻CATに接近し、富豪との面会に成功、富豪が隠し持つプルトニウムを回収する作戦にでる。
オスロの空港で、二人組に襲撃される中、アルゴリズムを入手する。しかし、ロンドンでカーチェイスの末、時を戻す装置を、セイタ―に奪い取られてしまう。CATを通じアマルフィで作戦を練るが、主人公の作戦は全て武器商人に筒抜けで、セイタ―は死期が近く自暴自棄なことを知り…
組織の協力の下、ロシアのタリンでの大作戦がはじまる。

一見、アニメ『時をかける少女』や『サマータイムマシン・ブルース』の様に、少しタイムワープする事で、状況を好転させる様に、書き換える主人公の物語ですが、タイムトラベルの際、時間の退行を実体験するのが違い。

物理の法則により、時間を逆行するには、もう一人の反物質の自分の存在が現れることになる。ここが味噌!これを体感するハラハラドキドキ感は、ヒッチコックを超える、心臓バクバク物の大迫力!

最後の場面、主人公が異を唱えるインドの武器商人プリヤを殺害することが意味するのは、我々が観た物語が実は主人公が自分なりに思い描いた世界に過ぎないことではなかろうか。彼が入り込んだ時間の迷宮、物理の世界なのだ。因って、彼の名前は「名もなき男」ではなく「主人公(Protagonist)」であるべきなのだと思う。
観客一人一人に名もなき《主人公》の冒険を体感してもらいたい、というのが、監督の狙いなのではなかろうか。だからこそ、主人公に著名スターを配役しなかったのではないだろうか!?

その他、協力者として現れる相棒ニールの存在、クライマックスの挟み撃ちでの攻撃など、簡単に見透せない複雑なスパイ戦が魅力。
更に、世界遺産のアマルフィ海岸、オスロ空港、エストニアなどの欧州ロケで、”映える風景”が多数あり、美人女優のエリザベス・デビッキもファッション共々、最高にCoolだ。

テネットとは、昔から西欧に伝わる暗号文字に記載された謎の言葉。映画中では主義などの意味でも使われている。
何のこっちゃと思いながらも、飽きさせないのがノーラン流の映画マジック。この斬新な映画作りは、ノーラン監督の独壇場だ!
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