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うさぎドロップのodyssのレビュー・感想・評価

うさぎドロップ(2011年製作の映画)
2.0
【退屈だった】

退屈な映画でしたね。最大の欠点は、作品のテンポが悪いこと。二十代後半の独身男(松山ケンイチ)が6歳の保育園児の育児に奔走するというお話ですけど、最初はともかく、実際に二人が同居し始めてからのぎくしゃくだとか苦労だとかすれ違いだとかが、のらりくらりと出てきているだけで、観客がぐいぐい引き込まれていくような面白さになっていない。

加えて設定上の問題もあると思います。相手は6歳の保育園児であって、純粋な赤ん坊ではないわけですね。そのせいか育児の大変さが保育園への送り迎えという部分にかなり重心を置いていて、そんなことなら別の解決法があるだろうと思えてしまいました。原作を読んでいないのでよく分からないんですが、どういうわけか主人公は親と同居しているわけでも、都心に近いマンションかアパートに一人住まいしてるわけでもなく、郊外の一軒家に住んでいる。独身なのにどうしてそんなところに住んでいるのか疑問なのですが(原作を読むと分かるのかな?)、6歳の保育園児と同居するなら、保育園の近くに引っ越せばいいじゃないですか。小学校に入るまでの1年間だけでしょう。その間だけ保育園近くのアパートかマンションを借りればいいだけのこと。1年間だけなら家賃もなんとか払えるでしょうし。

あと、設定上の問題といえば、最初でなぜ主人公の母親(風吹ジュン)が子供を預からなかったのか。彼女が育児が大変だと言うシーンがありますけど、でもあの時点では母親は仕事は持っていないわけでしょうし、彼女が預かるのが普通だと思うな。ああいう場合、息子や娘には預けませんよ。そこが非常に不自然な感じです。いっそ母親は死んでいて、松ケンが一人っ子、という設定ならまだしもですね。

不自然と言えば、子供の実の母親の設定もそう。生んでも育てない母親はいるでしょうけど、そういう無責任な母親に対して主人公(松山ケンイチ)は甘すぎると思うな。最後に写メールを送ってあげてるでしょう。私なら送りませんね。ああいう女とは金輪際コンタクトをとらないし、万一子供に会いたいと言ってきても会わせないし、主人公とは違って、直接罵声を浴びせます。陰でこそこそ浴びせるようないじましい真似はしません(笑)。

そう、この映画にいちばん欠けているのは、怒りだと思う。主人公はあんまり怒らないんですよね。育児をしていれば子供にあたりたくなることだってある。ましてこの場合、自分の子供じゃないし自分が預かる責任だって本来はないわけです。自分のカッコつけには責任があるかもしれないけど、自分への怒り、自分の親や親戚への怒り、子供への怒り、生み捨て女への怒り、それが圧倒的に足りない。ほんわか、テキトーに筋が進んで、みんないい人で、良かったですねと表向き言っておくと喜ばれるのかなあ、と斜に構えたことを考えてしまう、そんな映画でした。
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