ひげしゃちょー

ひとよのひげしゃちょーのレビュー・感想・評価

ひとよ(2019年製作の映画)
3.9
それまでも『日本で一番悪い奴ら』や『止められるか、俺たちを』や『牝猫たち』など今までも疑似家族のようなものを描いてきて、「凪待ち』で血縁ではない家族再生物語を描いたばかりの白井和彌監督がようやく血縁の家族を描いた。 疑似家族は裏切りや信頼関係の崩壊があれば崩れ落ちるが、血縁故に切っても切れないからこそ深くて考えさせられる。 長男が言う「母さんは母さんなんだから」、長女の言う「母さんが帰ってきたんだからそれでいいじゃない」など印象深い台詞が多い。 一番印象的なのは母さんが言う「ただの夜ですよ。」自分にとっては印象的な夜でも他人にとってはただの夜にすぎないわけだ。 うまい具合にシリアスとコメディが顕在していてちょうどいい。 最後の最後に次男が抑えてきた想いを爆発したところではさすがに涙腺崩壊。年齢的に家族の話に弱くなってきた。 このキャストでなければこの映画は成り立たなかっただろうな。3兄弟がデラべっぴんの話をする長回しのシーンが印象的。佐藤健が良い具合に裏がある役をやっていて味がある俳優になってきたなとしみじみ思う。