ぶみ

ひとよのぶみのレビュー・感想・評価

ひとよ(2019年製作の映画)
3.5
壊れた家族は、つながれますか。

桑原裕子が上梓した同名小説を、白石和彌監督、佐藤健主演により映像化したドラマ。
子どもたちに暴力を振るっていた父親を殺した母親が、逮捕、収監されてから十五年後、帰ってきたことにより、変化していく家族の姿を描く。
原作は未読。
主人公となる、家族の長男・大樹を鈴木亮平、次男・雄二を佐藤、末っ子の長女・園子を松岡茉優、父親を殺した母親・こはるを田中裕子が演じているほか、音尾琢真、筒井真理子、浅利陽介、韓英恵、MEGUMI、佐々木蔵之介等が登場。
物語は、タクシー会社を営むこはるが父親を殺した後、三兄妹のもとへ帰ってきたことにより、家族の止まっていた時間が動き出す様が描かれるのだが、東京でフリーライターとして生活する雄二、吃音症を患い、夫婦仲がうまくいっていない大樹、美容師になる夢をあきらめスナックで働く園子と、当然のことながら三者三様の生き方をしており、そんな三兄妹を、本当に血がつながった家族かのように、鈴木、佐藤、松岡が好演している。
また、それと同時並行で描かれるタクシー会社に新人ドライバーとして入社した佐々木演じる堂下が、話が進むにつれ徐々に存在感を放つこととなり、終盤にあるカーチェイスからの長回しはバイオレンスものを得意とする、白石監督の真骨頂と言えるもの。
そんな重めの話の中でも、事件後、タクシー会社の社長となった、音尾演じるこはるの甥が、コメディリリーフ的な役柄で、絶妙なアクセントとなっているとともに、ある年齢以上であれば、その存在感がツボになるであろう雑誌『デラべっぴん』が懐かしさ満点。
舞台の殆どがタクシー会社であるにもかかわらず、そこに集う人々の心の動きを、具に描き出すことで、動きのある映像に消化させており、『人よ』でも『一夜』でもあるタイトルの巧さにうならされる一作。

もう死んでるけどさ、さらに死ね。
ぶみ

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