シネマスナイパーF

ひとよのシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

ひとよ(2019年製作の映画)
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ジェダイの帰還ですねこれは
フォースというものを本質的に理解しているような物語でした
というとなんじゃお前頭トんでんのかワレって感じでしょうけど


フォースにはダークサイドというものがある
これは間違いない
しかし、広い目で見れば「フォースそのもの」に良いとか悪いとかはない
フォースは空気と同じように普遍的に存在していて、誰にでも影響を与える
フォースは我々と常に繋がっていて、フォースが全ての命を導いている
よって、起きる事象全てがフォースの導きであると言える
例えば、プロ野球選手として活躍している人はフォースの導きによって志し努力して成し遂げた、といったように

ただ、フォースの導きは時に我々からすれば悲劇だと思えることもある
先述したように成功に導くことがあれば、夢を諦めさせることもある
更には、そういった次元を超えた悲劇、例えば大切な人やものを不慮の事象で失ってしまうことや、自分の身の危険など、様々な試練を与える
これらの「悲劇」が所謂ダークサイドへの入口になることが多々ある

この物語の家族が遭っていた試練は、父親による暴力というもの
これもフォースの導きだというのか?残念ながらそうと言う他ない
父親にどういった事情があったのかはわからないが、彼もまたフォースによってそう行動していた
我々とフォースは常に繋がっているという話をしましたが、母親のこはるは映画の冒頭、フォースの導きを受け、ある行動に出る
この行動はダークサイドに飲まれた結果だと断言できる
悪人を成敗することの何が悪いのか?と思うでしょうが、少なくとも彼女は「子供達の幸せ」を欲し、「子供達を失う」ということを恐れていた
何が人をダークサイドへと導くのか?恐れ、そしてそれから生まれる欲望がそうさせる
ただ同時に彼女がしたことを褒めることができるのはなぜなのか?それは、彼女が「今の生活や社会的立場を失うこと」を恐れなかったから
失うこと、手放すことに恐れを感じなければ、ダークサイドから遠ざかることができる
彼女は「その時点」では「バランス」を保つことができた…「その時点」では
フォースは常に我々と繋がっていますが、本当の意味で完全に一体化するには善いも悪いも理解しなければならない
そういった意味で、彼女は上手いこと「バランス」を保ったのかもしれない

フォースと共に生きるには、現在に集中しなければならない
フォースを上手く利用できる者が時に未来を見る理由は単純で、未来はいつか現在になるものであり、今の事象が未来の事象を直接作り上げるからに他ならない
残念ながらこはるはそこまでの強者ではなかった
彼女がフォースの導きによって起こした行動により、愛した子供達がもがくということに気づけなかった
しかし、それでも彼女は現在に必死になった
それは決して悪いことではない


と長々と書き連ねましたが全然映画の話出来てないのでやめます
言いたかったことは、クライマックスのあの夜にこはるが放った一言こそフォースの真理に近いということ
その瞬間が悲劇になるのか否かはその人の捉え方次第であり、この広い世界にとっては取るに足らない「ただの夜」なんだと
そういうことが起こる運命に逆らうか、それともいい意味で運命に身を任せ、「主体的に受け入れる」ことであの夜への執着を手放すか、どちらがジェダイ的かということ
つまりこはるは一度ダークサイドを経験しそれを自分の中に取り込み制御することを出所してから様々な経験で学び、バランスをもたらした者として帰って来たと
だからこの作品はジェダイの帰還です

コメディ要素がかなり浮いてますがそれもまた不思議な味がして悪くない
佐々木蔵之介のエピソードは賛否あるようですが僕はボロ泣きしました
血の定めを呪われたものとして描いたヘレディタリー、それを克服するため、受け入れて整理して自分の一部として今を生きる、それがこのひとよでした