クマヒロ

ひとよのクマヒロのレビュー・感想・評価

ひとよ(2019年製作の映画)
4.1
全ての人の葛藤やどうしようもない気持ちを肯定してくれる、重たい題材ながらも優しさを秘めた作品だった。

15年もの間、あるー夜から何かが止まっている家族。
重たく閉鎖的な空気感、役者それぞれに映る葛藤が物語にマッチしていた。

三兄弟が迷いあぐね、それぞれがそれぞれの考え方でなんとか、気持ちのやり場を探す。
自分に言い聞かせるようにして迷いを消す母の、子供を思う気持ちと不器用さを思い出すと、レビューを書いている間も涙腺が緩む。
母が強くいようとすることは本当に美しい。
雄二がこの姿を見て葛藤を乗り越えていくのも納得できる。

これを表現した主要キャストの表情や、呼吸の仕方、目線等に至るまで本当に完璧で、迷いが伝わってきた。

兄弟3人の葛藤と、田中裕子さんの強い母親像が素晴らしい。
筒井真理子さんの嫌な感じの表情等もやはり一級品。

土を墓で拭ったり、もう一度死ねって言って水をかけたり、変なとこが似るのも兄弟だし、家族内の共通点が面白いし、白石監督らしいブラックジョークが効いていた。

堂下の存在も、最高。
これも書き出したらキリがない。

一夜で全てが変わった。
いや、たった一夜だから変わらない。
壊れた家族は繋がれる。

白石和彌監督流、家族の形は様々な葛藤からの救いの手を差し伸べてくれる。自分が向き合ってこなかったものと向き合わせてくれるような映画だった。
クマヒロ

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