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デッド・ドント・ダイのCookieMonsterのレビュー・感想・評価

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)
3.3
ジム・ジャームッシュのオフビートゾンビムービー

小さな町で突如として発生するゾンビ事件
地軸が歪んだという、よくわからない陰謀論のような理由が前提になって進む物語はQアノンを想起させるし、スティーブ・ブシェミが被る帽子はMake America great againのパロだし、銃ではなく日本刀や鉈でバッタバッタとゾンビの首を薙いでいく様はライフル協会へのアンチテーゼにも思えるし、多分に政治的な作品

台詞の中でジャームッシュの名前が出てきたり、登場人物がラストを知っていたりするのは、作品が現実世界と繋がっていることを示唆していて、そういった部分でも作品の政治性が現実と繋がっている

ゾンビは生きていたときの習慣を捨てられず、スマホやWi-Fiという言葉を繰り返しながらAロメロのゾンビの如く、のろりのろりと街を徘徊する様は、現実世界の生者たちを揶揄していて、資本主義社会の中で物質に執着している私たちの姿でもある
だから皆がゾンビになってしまっても、物質社会から離れ、ソローの森の生活を営んでいるようなトム・ウェイツだけは最後まで生き残るのだ
ジャームッシュには現実社会の私たちの姿はゾンビのように見えていて、生きているようで死んでいるのと同じだと蔑んで笑っているのかもしれない

本作のゾンビは首を切ると黒いガスを放つけど、あれは死んだ後に死体に溜まったガスを可視化して描いているようにみえて、だとすればゾンビ映画にリアリズムを持ち込んでいるようにも思えながらそんなこともないのかしら?

ジャームッシュ好きにはこのオフビート感やウィット、ひたりひたりと忍び寄ってくるゾンビ感は嫌いじゃないけど、中途半端な政治性はゾンビ映画には持ち込んでほしくなかったし、考えずに楽しめるのがゾンビ映画だと思うので、その点でジャームッシュが作らなくてもいいのかなって感じ

スターウォーズ新シリーズ観てないけど、ファンはアダム・ドライバーの鉈捌きに惚れちゃうんだろーなー
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