フォンザヲ

デッド・ドント・ダイのフォンザヲのレビュー・感想・評価

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)
4.5
ジム・ジャームッシュ作品にしては見易く、ゾンビ映画としては異色を放つ銘作。

終始(B級映画としては)めちゃくちゃな展開は、総じて見れば「粗雑」な作りだし、B級映画の「ルール」に従って作られていない。この何にも属さないインディペンデント(独立的)な映画こそジム・ジャームッシュ作品である!

ゴーストバスターでお馴染みのビル・マーレイをメインに据えて、ヴシェミ、ティルダスウィントン、ジャームッシュ作品に欠かせないトムウェイツなどが脇を固めている。面子に役を割るのがキャスティングの技術なのだが、ここからジムの腕が光る。
ゾンビ映画というジャンルはB級映画を代表する。そしてB級映画に欠かせないのは「メタ」と「粗雑さ」である。B級映画における「メタ」とは分かりやすく言えば「内輪ノリ」である。このノリが楽しめなければB級映画の鑑賞は苦痛でしかない。ゾンビ映画というニッチなジャンルは、もはやこの「メタ的オマージュ」を愉しむもので、側からみれば何が面白いのかさっぱりわからない内輪ノリそのものを愉しむものなのである。
ゴーストバスターからゾンビランドへのカメオ出演しているビルマーレイを起用するのも、メタ要素の一部であり、ゾンビ、ホラー映画の系譜を引いている。
ジムはこのようなノリをメタ的に配置し、しかも意図的に滑らしている。劇中では「ロメロ」に直接言及しており、ダラダラした黙示録の世界を冷めた態度でいるアダムドライバーは「ほら、これでしょ?」と言わんばかりにメタ的言動を繰り返しゾンビ映画オタクを嘲笑う。そんな態度にオタクの怒りを代弁するかのようにマーレイがアダムにキレる。そしてトドメはUFO。どこまでも挑発的なジムの態度に対し、ゾンビ映画オタクが憤慨して低評価を付けています。

だが、本作は一重のメタでB級映画を堂々と正面から製作しただけではない。ニヒル役に徹していたトムウェイツが、最後にしっかりと現実的かつ痛烈な社会批判をぶち込んできます。やっぱりジャームッシュ作品!と思わせる締め方に感動。
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