このレビューはネタバレを含みます
ジャームッシュ節が炸裂したロメロ的ゾンビ映画。
ロメロに消費社会の象徴として風刺されたゾンビは、時代の経過と共に多様な意味を詰め込める便利な人形として消費されるようになった。
社会風刺、バイオレンス、コメディと様々なゾンビ映画が生まれる中で、ジャームッシュは原点に立ち返る。
小道具が敷き詰められたショット、豪華過ぎるキャスティング、武器にまみれる生存者たち、生前の物欲をはらそうとするゾンビたち。
劇中で終始展開される消費社会への風刺は、アダムドライバーと同様、観客にも"悪い結末"を予想させる。
苦しくも予想は的中し、消費社会を皮肉するナレーションが流れる。
「物に捉われた人間はゾンビと同様で、それに気づかぬ世界はクソだ。」
本作のテーマソング『デッド・ドント・ダイ』の名の通り、物欲にまみれた人間は死なない。既に死んでいるのだから。
そして、デッド(人類)は新たなステージへ向かうかもしれない。
自らの豊かさ快適さのために、むやみに物質を創造し化学を発展させた、死ぬことが"できない"未来へと。
『デッド・キャント・ダイ』な世界はもうそこまできているのかもしれない。