てっぺい

デッド・ドント・ダイのてっぺいのレビュー・感想・評価

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)
3.0
【自由すぎるゾンビ映画】
ゾンビに嗜好品がある世界。コーヒーにギターにWi-Fiまで笑、どこか愛らしいゾンビ達と対峙する主人公達の、後半散発される自由すぎる発想に、爆裂笑わされる。映画館リハビリにぴったりのゆるめな一本。
◆概要
2019年・第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。2020年6月5日公開。
監督:「パターソン」ジム・ジャームッシュ
出演:「ジャングルブック」ビル・マーレイ、「パターソン」アダム・ドライバーほか、セレーナ・ゴメス、イギー・ポップら
◆ストーリー
アメリカのとある田舎町。ダイナーで起こった変死事件以降、墓場から死者が次々とよみがえり、ゾンビが町にあふれかえってしまう。警察署の3人は日本刀を片手に救世主のごとく現れた葬儀屋のとともにゾンビたちと対峙していくが……。
◆感想
全くホラー感なし。むしろ笑えるゾンビ映画で、途中から散発される自由すぎる発想、この独特の世界観はジム監督ならでは。特にアダム・ドライバーにしかできないあのネタには笑える笑。映画館復帰リハビリにはちょうどいいゆるさの映画かも知れない。

◆以下ネタバレ

◆絶妙さ
ゾンビ映画なのに笑える、B級映画っぽいけどB級映画っぽくない絶妙さもいい。アダム・ドライバー演じるロニーのキーホルダーがスターウォーズなのは笑えたし、UFOにゾンビが集まり何が起きるのかと思いきやゼルダが「お前が乗るんかい」な展開笑。コーヒーやギターならまだしも、Wi-Fiと呟き歩いてしまうイマドキゾンビ笑。台本を読んで監督の文句を言う映画なんて見たことない笑。ただこれだけだとよくあるB級映画に陥ってしまうところを、ゾンビの終わりを黒灰CGで表現していたり、キャストのそれなりな豪華さ、有名アーティストの起用でギリ笑、見やすくなっていたのでは。
◆視点
そんなゆるゆる映画の中、終始感じていたのは、視点。まず白人至上主義者が無意識に黒人差別発言する冒頭に見る、白人→黒人の差別化の視点。そして、この映画に登場するゾンビの特徴は、コーヒーやファッションなど、それぞれに意思があり、個人の趣味趣向を持つ。いわば生前の人格を持ちながら、クリフとロニーになまじゲーム感覚で倒されていくある意味残酷さすら感じる。他のゾンビ映画よりも強い、人間→“人間だったもの”の差別化の視点。でも、次第に人間がゾンビ化し、ハンク(黒人)やミネルバ(同僚)が“人間だったもの”に変わっていく。このいわば人間→“ゾンビ人間”の差別化の視点。無理やり結びつければ、至上主義として白人、広く言えば人間を中枢に据え、“自分とは違うもの”を排他的に捉える差別主義への隠喩、これはそんなことを表現しているのではないか。終始冷徹にゾンビを粉砕していくロニーは、ジム監督自身による脚本を読んだ上での彼なりのキャラの飲み込み方であって、ある意味監督の“言いたいこと”を映画で具現化する存在。“このままでは世界は終わる”と締めたラストは、そんな排他的な意識がはびこる現代への警告…そんな見方も出来るのではと思った。まあ、そんな事考えずに軽い気持ちで楽しむべき映画ですが笑

ゆるゆるゾンビ映画。何よりも、映画館で久しぶりに映画を観れる喜び。席の感覚を開けていたり、鑑賞中なんだか咳がしづらかったり笑、まだまだコロナ前には程遠いですが、どうやら来週以降も良作が待っているようで、楽しみ!
◆トリビア
○ 本作のサウンドトラックを手掛けたのは、ほかならぬジャームッシュ監督が率いるバンド「SQURL」(スクワール)。(https://www.cinemacafe.net/article/2020/06/05/67427.html)
○「コーヒー・ゾンビ」や「ギター・ゾンビ」、コミカルなキャラとして有名アーティストが多数カメオ出演している。(https://theriver.jp/dead-dont-die-musician/)
○互いに“死”というテーマを持った漫画「100日後に死ぬワニ」と本作のコラボレーションが実現した。(https://www.fashion-press.net/news/49757)

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