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デッド・ドント・ダイのゴトのレビュー・感想・評価

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)
3.7
「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」は時代を超えて現代に生きる吸血鬼の話で、何というか高貴な雰囲気を持っていたが、出てくるモンスターがゾンビとなると、テイストも随分変わってくるようだ。

ガソリンスタンドにダイナー、モーテルに昔のアメ車と古き良きアメリカを印象づける、象徴のような存在がいくつも登場し、定期的に流れる「デッド・ドント・ダイ」の音楽がアメリカの片田舎の牧歌的な雰囲気を一層引き立てている。

自分はあまりゾンビ映画を見ないのであれだが、ゾンビは大勢で襲いかかってくるから迫力があるのだと思っている。だから作品の舞台は人の多い場所のが良いはずだ。にも関わらず、センターヴィル(多分ヴィルはヴィレッジ)なんて名前の小さな町を舞台にしているところを見ると、ゾンビ映画であることよりそっちのが大事なんじゃないかと思ってしまう。

そこで気になるのが、生前の活動に引き寄せられるという他のゾンビにはない特徴だ。つまり、この映画の中のゾンビは死してなお自分の好きなものに固執しており、その様は今を生きる現代人を指しているのではないかと思う。まあ、テニス好きなのを悪いとは言わないけど、色々な娯楽に溢れた今だからこそ、一旦そういうものから距離を置いてみるのも良いんじゃない、ということが言いたいんじゃないかと思ったりする。

だからこその田舎町であり、その極地にいるのがトム・ウェイツ演じるボブな気もする。実際ボブは全くゾンビに襲われないしね。そして、まずい結末になる、というセリフも情報の通信速度の発達によって都会と田舎の差がなくなってしまうことを危ぶんでいるとも取れる。

ただゼルダの存在がよく分からない。普通だったら「非力な主人公たちにとっての強力な武器」としての立ち位置だと思うが、あまりそういう感じもしない。まあ、宇宙人もアメリカを代表する人外だし、古き良きアメリカに殉じると考えるなら分からなくもないけど。

あとビル・マーレイのゾンビキルは「ゾンビーランド2」のが全然面白かった。
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