間違いなくジャームッシュ史上最高に笑えたコメディであり、正統ゾンビ映画に対するリスペクトと踏襲で彩られた棺桶型オモチャ箱な最新作。
『Only Lovers Left Alive('13)』のジャームッシュmeetsヴァンパイアで面食らい、お次はまさかのジャームッシュmeetsゾンビをお見舞いされることになるとは…!
尚且つ往年の脱力気質を失わず、風刺の効いたオフビートで色褪せぬジャームッシュ節をしっかりアピール。
今や彼のアイコンと言っても過言ではないコーヒーとギターもこの度は笑いのネタと化し、常連俳優たちはしのぎを削り、飽くなき物質社会の顛末を見せつけてくれます。
これが橋本忍の『幻の湖('81)』みたいにたまたまポンコツが出来上がったんじゃなくて、しっかり狙ってポンコツ作ってカンヌに送り出すんだから、やっぱジャームッシュは奇才ですよ。
またジャームッシュの作品にはどこからともなく"死者の香り"が漂ってくるのも魅力の一つ。
思えば『Down By Law('86)』も墓地のショットから始まり、
『Mystery Train('89)』では幽霊が登場し、
『Dead Man('95)』は生死の辺境を彷徨い、
『Only Lovers~('13)』で不老不死を描き、
そして今回『The Dead Don't Die('19)』では死者たちが甦るという。
メインの警察官トリオに加えて、『Stranger Than Paradise('84)』を彷彿とさせるクリーヴランド出身のヒップスタートリオ、また『Down By Law('86)』を彷彿させる鑑別所トリオもファンには嬉しい設定でした。
『Ghost Dog('99)』みたく巧みな剣技を披露するゼルダ・ウィンストンなる役名はもう優勝だし、
セレーナ・ゴメスとアダム・ドライバーの対峙は最高の保養だし、
『Stranger Than Paradise('84)』から実に35年ぶりの登場となるエスター・バリントなど、見逃せないキャスティングも目白押し。
にしても、世界中の名監督から寵愛され続けるアダム・ドライバーのポテンシャルよ…!
まだまだリドリー・スコットやレオス・カラックスの作品にも出演予定ということで、ミレニアル世代最高峰の寵児として今後の活躍からも一切目が離せないですね。