松井の天井直撃ホームラン

雪に願うことの松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

雪に願うこと(2005年製作の映画)
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↓のレビューは。今はもうなくなってしまった映画レビューサイトに、鑑賞直後に投稿したレビューを。こちらのサイトに移行する際に、以前のアカウントにて投稿したレビューになります。

☆☆☆★★★


資本主義競争で‘負け組’となってしまった男。
父親の幻影から脱け出せずにいる女性騎手。
口は悪く暴力的だがみんなを支えている調教師。
みんなが幸せになりたいと願い今一頭の馬に託す。

監督の根岸吉太郎はロマンポルノ作品でデビューした当時からその時代にマッチした若者像を描いて来た。
この作品では以前の根岸作品で主演していた時任三郎や永島敏行の様なアッケラカンとした若者では無く、IT産業で時代の寵児になりそこねた男。
「世間を見返したかった」と言い、それに対して「なして見返さなきゃいけない」と兄。

馬車馬の様に働いて来た者でもいつか坂道が来れば‘足を溜める’事が必要だ。

出演者達は全員が好演です。
特に、嫌みな高利貸し役の山崎努は絶品。他にも吹石一恵は普段テレビ画面から感じる人柄からかけ離れた気の強い女性騎手役で今までとは違う面を見せてくれる。
今後は是非飛躍して欲しい。
そして小泉今日子は年々女優として花開いて来た気がします。昨年公開の『空中庭園』が圧巻でしたが、ここでも心に‘ある想い ’を持つ女性を巧みに演じている。

夕陽に向かって障害を駆け上がるウンリュウの美しき力強い姿は忘れられません。

心優しい作品です。

(2006年5月24日銀座テアトル・シネマ)