マーくんパパ

雪に願うことのマーくんパパのレビュー・感想・評価

雪に願うこと(2005年製作の映画)
3.9
帯広ばんえい競馬場近くの厩舎、故郷を捨てて東京で身勝手に暮していた学は事業に失敗し責任放棄してここへ逃げ帰る。兄の元で暫く仕事を手伝いながら身を隠す生活が続くが、ギスギスした人を見下し卑下する態度は変わらない。厩舎にはピークを過ぎて屠殺目前のばんえい馬ウンリュウがいた。朦々と白い息が立ち込める朝の冷気の中、調教される馬たち。チフスにかかった馬の腹を徹夜で撫で続け看病する仲間、雪玉を屋根に乗せ快癒を願うも死んでしまう馬。人には厳しいが馬には優しい大将の兄威夫についていく厩舎の仲間たち。スナックで働きながら賄い婦として大将を助けるバツイチの晴子。借金で失踪した騎手を父に持ち一人前の騎手を目指す牧恵。そんな人たちや馬を見ていくうちに学の表情は変っていき、後のないウンリュウと気持ちを通じさせながら世話をしていく。自分が見捨てた痴呆の母は今も施設で学が成功して故郷に戻り迎えに来てくれると信じ込んでいる。皆の想いを乗せてウンリュウがレースで走る。ウンリュウが引く重いソリ自体が皆の背負っている十字架でもあるようだ。レースでの予想されるクライマックスの感動を先に各シークエンスが掬い取ってしまっている為、期待した大きな感動の波は来ないが無言で頑張る馬たちの表情を見てるだけで胸が熱くなる。