takeman75

どん底作家の人生に幸あれ!のtakeman75のレビュー・感想・評価

3.9
ディケンズの名作『デイヴィッド・コパフィールド』を、映画という「幻想投影機」の力を借りて再構築した、魅力溢れる人生冒険譚。人種を意図的に混合したキャスティング含め、降りかかる不幸を「ホラ話」でコーティングした味付けの妙は、全盛期のギリアム映画やバートンの『ビッグフィッシュ』にも似た味わいを感じた。
どう考えても120分の映画枠では収まりきらない長大な原作を、主人公の脳内というフィールドで好きなようにシャッフルし、愉快な「変人」たちを自由に闊歩させた演出が観ていて楽しい。主演のデヴ・パテルが生き生きと演じるデイヴィッド・コパフィールドの佇まいも、この世界観にピッタリで、まるでロンドンという「奇人遊園地」の道先案内人に腕を掴まれ、様々な裏道に導かれているような喜びも。まあ、全体的に積載量過剰な感覚を呼び起こす内容なので、好き嫌いは分かれると思うけど、ディケンズへの愛情と敬意が溢れる終盤を含め、作り手たちの優しさが染み入る好編。
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