無知A

ぼくらの7日間戦争の無知Aのレビュー・感想・評価

ぼくらの7日間戦争(2019年製作の映画)
3.3
音楽や世界観など、外面を見れば、紛うことなき良作だと思う。しかし、中身を吟味すると、物足りなさを感じる。一見、物語は子どもたちが我を通して、大人と対立するといったシンプルな内容で見やすい。だが、裏を返せば、単調なので展開が読まれやすいように思う。そして、もう少しキャラクターの掘り下げが必要だったように思う。紗希は文脈がしっかりとしているので、例外として、出番の多い主人公や香織はエピソードがしっかりしていた。だが、壮馬や博人、肝心の綾は、明らかに場面が足りないように感じる。情報量には問題が無いのだが、キャラクターに感情移入出来るか問われると首を縦に触れない。

さて、ここからは内容について考える。主人公達は、綾の誕生日を一緒に祝う為、あるいは離れ離れになった父母と再会を果たす為、大人への七日間の抵抗を試みるが、ここに意義はあったのだろうか。アイデンティティの確立、これを成し遂げたという意味だと、そうなのだろう。だが、一連の流れを反逆と考え、手痛い制裁が下され、それが契機となってアイデンティティが確立された、このように考えるのならば見え方も変わってくる。これは完全な持論だが、現代の思春期は昔以上に厄介かもしれない。私が子どもの頃は、大人に反抗的な態度をとると、ボコボコにされたものだが、現代でも形は違えど、プロセスは同じなのだと思う。今作の中盤あたりにも出てくるが、皮肉にもネット上の誹謗中傷や晒しが体罰に近い役割を果たしている。思春期には痛みとつらさが伴う。これは、やはりどの世代も変わらないのだと考えさせられた。今作のタイトルには戦争という言葉が使われているが、戦いの傷跡や戦利品は意義そのものなのだと思う。したがって、意義はあったのだろう。
無知A

無知A