茜雫

ぼくらの7日間戦争の茜雫のレビュー・感想・評価

ぼくらの7日間戦争(2019年製作の映画)
3.4
中高時代、わたしたちって何に怒って何に反抗してたっけ。先生たちに苛立って、みんなで悪口言って。それ以上に何か抗ったことなんてない気がする。

原作の"解放区"は、自由で、活気に満ちて、ユーモアがあった。大人たちへの不満を爆発させた結果があの七日間の戦争だった。解放区は戦うための基地というより、子どもの立場やプライドを守るための砦だったように思う。

そう考えた時に、原作と比べるとやや始まりも終わりもさらっとしていたなぁと思わざるを得ない。マレット以外の6人は何に対してそこまで不満を持っていたんだろう。声をかけられた、連れてこられた以外にどんな理由があって繋がったんだろう。ただ何となく7日間を過ごしたから芽生えた絆、秘密を曝け出したことによる繋がり以外に何があったんだろう。だって初日にはそれはなかったはずなのだから。

みんな孤独だったんだな、と思う。現代においてその孤独というのは誰にも付きまとうものであり、そこが表現されていたのはよかったかな。
ただ、その孤独が原動力になっている7日間には見えなかった。恋愛が始まりというのも少し安直に思える。もう少し動機的な部分を掘り下げてみたら、原作から30年経った現代にオリジナルストーリーで作ることの意味がもっと見えたんじゃないかな、なんて思いました。

あと秘書の本多?アイツはダメ。SNSで子どもたち晒し者にするのは流れからしても理解できなかったし、それによる大衆からの暴かれ方晒され方が変にリアルでちょっと気分悪かったな。原作が児童書だからこそ、そういう表現は避けて欲しいと思ってしまう。結局のところ児童書なんていうのは子どもの日常に幸せを与えるためにあって、子どもに絶望を説くべきではない。原作が児童書なので、映画もそこを守ってほしかった。

わたしはあの作品に「冒険」「挑戦」を強く見出していたのだけれど、製作陣はきっと「青春」「友情」を見出していたのかな。
アニメ映画化に際し、宗田先生はシリーズのテーマでもある"大人への挑戦"と"ユーモラスな戦い"を描くことを条件とされたそうだけれど、それがうまく表現されていたのかと言うと……わたしは、悩ましいと思う。
一本の映画として見ると面白いけれど、原作を考えてしまうとモヤモヤするところの残る作品でした。

2023_10
茜雫

茜雫