FumiyaIwashina

わたしは光をにぎっているのFumiyaIwashinaのレビュー・感想・評価

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)
3.9
長野から上京し、初のバイトをすぐやめてしまったり、無口で周囲とちゃんとコミュニケーションも取れなかった澪の成長物語。長野の旅館だけでなく、再開発が迫る下町の東京でも、銭湯、映画館、ラーメン屋などそこに暮らす人たちの基盤がどんどん失われていく様子に儚さも感じられる。
エチオピア人との交流のエピソードがちょっと唐突すぎたり、最後もドキュメンタリーぽくなりすぎていたりときれいにまとまっていないところは多々あったが、それを補って余りあるほどに個人的に大好きな類いの映画だった。特に澪が湯加減を確かめるために浴槽のお湯を救うシーンはタイトル通り光を握っているかのようで、素晴らしいシーン。時代の波に取り残されたような雰囲気がありながらも静かに心の中で炎を燃やしているようなストーリーで、ラストも秀逸。タイトルの由来になっている「自分は光をにぎつてゐる」の詩どおり、苦しくても決して光を離すまじという信念が感じられる。