りょう

わたしは光をにぎっているのりょうのレビュー・感想・評価

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)
4.0
やっぱり中川龍太郎監督の作品が好きです。きっかけはhuluオリジナルドラマの「息をひそめて」の試写に行った時からですが、多くを語らず、描写と後ろで流れる音楽と、心に残る必要最低限のセリフで構成されていて、見終わった後、ゆっくり静かに心に染み込んでいく感覚が好き。

主人公の澪は、祖母の病気をきっかけに実家である民宿が畳まれることになり、東京は立石に祖母の知人がいる銭湯に住み込み、仕事を探すことになる。内向的な性格でスーパーのバイトもすぐに辞めることになるが、目の前のできることをひとつずつ、という祖母の言葉に後押しされ、銭湯の仕事を手伝うようになる。

一方銭湯含むその地域一帯は都市開発計画が進んでおり、時期に立ち退きの日が近づいていた…。

澪が立石の人たちと触れ合いながら、自分に出来ることを少しずつ広げることで、ちょっとだけ成長する。

山村暮鳥の「自分は光をにぎっている」という詩。
これがとても味わい深い。
光ってとても明るいものだけど、つかめない。握っているつもりが、手を開いてみたら何もないって思えてしまう。今ある生活、とか、幸せ、とかそういうものも光な気がする。このいまある幸せ、って存在するようで、いつ手をすり抜けてなくなってしまうかもしれない、危ういものでもあって。当たり前の幸せを、ちゃんと幸せだって感じて、絶対にこれを失くしたくないって努力することの大切さを教えてもらえるよう。

にぎった光を手放すまいと生きてきた立石のお店の大将たち。なくならないで欲しいな。もちろんこのまま放っておけば防災の観点から危ないとか、そういうこともあるんだろうけど、この古き良きとなんとか共存できないものか。散歩してみたいな、立石。うちの母親が小さい頃に住んでたところだって聞いたな。

途中出てくるクリスチャンに吹いたし、ぼけちゃって女湯覗いちゃうおじいちゃん、そのシーンだけめっちゃ大声で注意する澪。脇を堅める役者が素晴らしいが、やっぱり光石研!ぶっきらぼうだけど、街を愛していて、誰よりも銭湯を、この街を、守りたいっていう気持ちもあって。澪に銭湯の仕事を教えていく感じも良かったな。

▪️心に残ったセリフ
「澪ちゃんは話せないんじゃなくて、話さないんだよ。そうすることで自分を守っているの」
「どう終わるかって、たぶん大事」

「息をひそめて」もまた見直したくなったな。
りょう

りょう