あのくも

わたしは光をにぎっているのあのくものレビュー・感想・評価

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)
1.3
なんなんだろう、この映画撮った人は被写体とカメラを1メートル以下に近づけてはいけないみたいな自分ルール作ってそれを厳守してたのかな。主人公を取り巻く風景にフォーカスを絞ったりズームした画がないからもののディテールが全然わからない、ボンヤリした印象だけが積み重なっていくのが見ててしんどい。

銭湯は写っていても、水気でぬめるタイルの光沢や立ちこめる湯の匂いは写っていない、老人の笑顔は写っていても、その顔のシワに刻み込まれた影は写っていないという有り様で。当然(断言するが)、鑑賞者の“特別な”愛着はそこに宿りようがない。狭いロケーションのためなのかアングルも限定的で、銭湯の空間がどう広がってるのか全然わからなかった(あそこ映画を上映する空間なんてあったの!?ってビックリしたくらい)。

作劇上の登場人物たちへの描写も同様で、内心に迫ったり情緒を掬いあげるようなシーンは少なく(そもそもボンヤリした主人公がコミュニケーションに際して能動的に動かないので、他の登場人物の内面に踏み込むことは皆無)、唯一ある人物がボリュームたっぷりに内心を吐露するシーンも「酔っ払いが酔っ払いみたいに話す」紋切り表現に終始していて、ここにさえ細部の掘り下げは希薄だったように思える。

総評としては「ボンヤリした人間をボンヤリ撮ってたらそりゃボンヤリした映画にしかならんよな」って感じでした。