Shin

わたしは光をにぎっているのShinのレビュー・感想・評価

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)
4.4
天井が低くスクリーンが見づらいと、あまり良い評判を聞かない、こちらの映画館。
僕も通路側に陣取り、体を斜め上にして観ております。しかし、今日ばかりは拍手せずにはいられません。

中川監督と光石研さんのトークイベントが行われたのです。しかも水曜日のサービスデイの料金のままという、何と気前がいいのでしょうか。
100周年おめでとうございます!

さて本作は長野の片田舎に住む澪(松本穂香)が、東京で銭湯を営む京介(光石研)を頼って上京し、成長していく話です。

松本本人が語っているとおり、あまり役を作り過ぎずに素に近いカタチで演じたということもあり、彼女の魅力がより増しています。

また監督が話された、京介も主人公の一人と言うように、光石研さんがいつもながら素晴らしく、「覚悟とは他人を巻き込むことだ」という台詞が心にささりました。

そして人物だけでなく、東京の立石の下町の風景に息吹きをもたらし、主役のひとつとして描いているところが、本作の最大の特長と言えます。
ここまで風景を生き生きと捉えられる監督は、日本ではそうはいないのではないかと思います。
何気ない銭湯のお湯さえも、美しい泉のように見えてしまう映像の素晴しさ。

澪が落ちこんでいる時に連れられて行った、エチオピア料理でのシーンは何とも微笑ましかった。(笑)

しかし、東京のあちこちで進む再開発の波が押し寄せ、そこに住む人たちの大切な居場所が失われていく。

そんな悲しみに光を当てるがごとく、静謐な湖の船上で語られる『山村暮鳥』の詩を引用した台詞が印象的でした。
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