イホウジン

わたしは光をにぎっているのイホウジンのレビュー・感想・評価

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)
2.3
軽薄な優しい世界。
平和すぎて、吐き気がするほど気持ち悪い。

失笑してしまうほど全てがステレオタイプな表現で驚いた。あらゆる描写が手垢のこびり付いたものばかりで、全く新鮮さを感じられない。監督はきっと日本にはたくさんのユートピアが(特に田舎には)あると信じているようだが、「サウダージ」で描かれているように、現実はそう甘くない。むしろ今や田舎の方が東京よりもよっぽど没個性な風景と化しているし、もはや日本に求める希望はそういうフェーズには存在しない。
今作では「再開発」がテーマの一部になっているが、ここもなんの個性もない。結局のところ、あの映画で起こった全ての出来事は現状追認である。これは現代の“政治的無関心”の問題にも繋がると思うが、追認の先にそれなりの幸福を見出したところで幸福の相対値が低下していくのは明らかである。映画に社会運動を求める気は毛頭ないが、仮に社会問題を映画に取り入れるなら、具体的にどこが問題なのか監督なりの見解が必要だったように思える。
ストーリーも酷い。支離滅裂。登場人物たちがどこから来てどこへ向かうのかさっぱり分からない。衝突も融和も何も無い無機質なつまらない世界だった。
映像も雑。登場人物の表情が遠すぎて全然見えない。素人を集めた映画ならまだ分かるが、仮にも経験も実力もある俳優を集めている訳で、もっと尊重したカメラワークを出来なかったのだろうか。

まあでも言いたいことは分かる。再開発へのもどかしさは私も理解しているので、そこだけは尊重したい。主題歌も良かった。

終盤があまりにも酷すぎたので、最後の方は「ここで終わらないでくれ!」と祈るばかりだった。エンディングは若干マシになったのでよかった。
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