イチロヲ

八月はエロスの匂いのイチロヲのレビュー・感想・評価

八月はエロスの匂い(1972年製作の映画)
4.0
学生時代の教諭(永井鷹男)と関係をもっている女性(川村真樹)が、勤務先の宝石店に押し入った強盗犯(むささび童子)に新刺激を求めてしまう。シラケ世代の幸せ探しを描いている、日活ロマンポルノ。

藤田敏八のロマンポルノデビュー作だが、早くもロマンポルノの冠が意味をなさないほどの作家性に満ち足りている。当時のシラケムードを背景にしながら、甲斐のない人生からの脱却を望んでいる主人公の自己実現を紡いでいく。

ドラマ内では、結婚を前提としない愛欲を貪っている主人公と、結婚を前提とした交際を続けている従妹カップル(片桐夕子&粟津號)を対比。中盤から、情夫の教諭と一緒に自動車で移動するロードムービーに転調するところが面白い。

情夫は強盗犯の青年が属しているヒッピー族に蔑視を向けるのだが、主人公は厭世家のフィルターを通しながら、幸福について懊悩煩悶。ヒッピー族が合唱する「遠い海へ旅に出た私の恋人」(ジャックス)が、絶妙な相乗効果を上げている。
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