ねこ無双

The Iron Rose(英題)のねこ無双のレビュー・感想・評価

The Iron Rose(英題)(1973年製作の映画)
4.3
幻想ホラーのような趣き。
ジャン・ローラン監督だけど、血も流れず、ヴァンパイアも出てこない映画。

自転車で待ち合わせした男女。
男に誘われ、墓地デート(!)
二人は広大で古びた墓地を散策する。墓地を訪れる人はまばら。
花を抱える婦人、ピエロ。
最初は怖がっていた女性だったが緊張も緩み…愛し合うために地下墓の扉を開けて入ってゆく。そんな二人を遠くからじっと見つめる男。
ところで墓場でむらっとするって凄いな。

そして、日もすっかり暮れて地下墓を出た二人だったが、歩けども歩けども帰り道が見つからなくなってしまう。明かりもなく広大な墓地が迷路のように二人を取り囲む。
その恐怖により二人に精神的な変化が徐々に訪れる一夜が描かれる。
女性は恐慌を来した後、ゆっくりと常軌を逸してゆき、愛と死について考え始める。

鉄の薔薇が波に打ち寄せられる海岸。
女性の手に包まれた鉄の薔薇はまた海へ還ってゆく。
レトロで美しい映像と印象的なピアノの旋律の音楽のオープニングロールに気持ちがざわざわさせられ。朝靄の中ゆっくりと向こうから近づいてくる女性。
二人の待ち合わせ場所に停車する列車も靄に包まれて。
鬱蒼とした西洋墓地、鉄の十字架、墓石まで退廃的なムード。
舞台がセピアな色調なのに、女性の衣装は現代的で目の覚めるような原色カラー。場違いなところで迷子になってしまったかのよう。
左回りに回転する男の映像、右回りに回転する女性の映像。
そして、二人は衝撃的な結末へ。

この映画は序盤の出会いのシーンもいい。
知り合いだけが集まった結婚式の小さなアフターパーティーで二人は出会うんだけど、日常からの非日常世界へ誘われるっていう流れになるのがとても好きです。

しかしなんとも哀しく幻想的なピアノ曲!
シンプルな旋律なので、一本指打法で私でも弾けないかな。

今作は8月に一夜限りの特別上映されたとの事です。いいな〜…字幕付きで上映設備での鑑賞。行けた方、羨ましいです!