映画館で観なくて良かった。
あんな大スクリーンで観たら心臓が止まってしまいそうなくらい、後半は展開が読めなくてずっと息が詰まりそうだった。
印象に残ったのは「雨」と「臭い」の描写。
激しい雨はうねるように容赦なく半地下の家に流れ込んでいく。
どうしようもない不可抗力。どうあがいても手が届かないものがある。
夢を見た直後に現実を突きつけて叩きのめすような雨。
体育館に避難して雑魚寝する人たちがいる一方で、豪邸一家の息子はわざわざ庭にテントを張って豪雨を楽しんでいる。
わかりやすく両者の隔たりが見えたシーンだった。
臭いは、分類の意識と自尊心の象徴だった。
「この人とは同じ臭いがする」と日常でも無意識に使っているなあ、とふと気付く。
臭いを否定されることは、私はあなたとは違うと言われること、そして自尊心を傷つけられることだ。
絶望に次ぐ絶望の中でも、ラストシーンは救いがあった。小さな救い、でもそれがリアルでいい。
想像はその灯火を絶やさない。
それが誰も知らない暗い地下の部屋だったとしても。
