うえびん

パラサイト 半地下の家族のうえびんのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.2
面白さは寄生する

2020年 韓国作品

前半のコメディタッチ、後半のサスペンスタッチ、物語の背景に描かれる社会問題、一つの作品の中にこれだけ多くの要素がバランスよく盛り込まれた作品はめずらしい。

半地下に暮らす家族の視線(視覚)、ご馳走とジャンクフードとジャージャー麵…、住む場所や生活によって変わる食事(味覚)、突然のチャイムや電話(聴覚)、そして物語の核となる匂い(嗅覚)、あまり印象には残らないが、触る(触覚)場面もちらほらと。五感全てに訴えてくる演出も最初から最後まで飽きさせない要素になっている。

鑑賞後の余韻はいいとは言い切れないんだけれど、とにかく一つの作品として面白い。2年前の初見から2度目の鑑賞だったのに、ハラハラドキドキしたり、ソン・ガンホを中心とする出演者の演技に引き込まれるのは、ほとんど変わらず。ストーリー展開が分かっていても面白い。

階段をモチーフとして、上から下へ、下る、降りる場面が繰り返し描かれるのが印象的だった。これには格差社会への風刺が込められていたのだろう。一方で、人間の心の表層(上)から深層(下)へのメタファーも感じられた。

何度観ても面白いということは、この作品の面白さ自体が、観る者の心の深層に寄生(パラサイト)するのかもしれない。
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