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パラサイト 半地下の家族のNMのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
3.0
原題:寄生虫
せっかく信用して家庭教師代行を紹介してくれたのに裏切るなんて、と思ったが、よく考えれば私も相当甘い側なんだろう。
この一家に観賞用石なぞを持ってくるぐらい世間を分かっていない上流階級層のことを配慮などしている暇は彼らにあるはずもない。

だが父や息子は、石をもらっても嫌がる様子もなく素直に有難がっている。こんなの誰だって嫌がりそうなものを。帰ったらいっせいに文句を言うのかと思ったらそうじゃない。

他にも奥様は純粋な方だとか娘が好きだとか、どうも本心からそう言っている。どの口で言っているんだと思うが、ナチュラルに嘘をついていて特にそれを悪いとも認識していない様子。同じようなことをしている夫婦を見たときも私は違うと言い放つ。

大胆な計画と才能で嘘をつく一家なのだが、一方でなぜか妙なピュアさを持っている。裏でも悪口も言わず感謝の言葉すら口にするし、金持ちはムカつくから搾り取ってやろう、という趣旨ではないようだ。やってることは同じでも。

明るく前向きに過ごしているように見える。だが向けられている根本的な嫌悪は着実に蓄積していた。気にしていないように見えても、あるいは気にしていないふりをしていても、ある時ふいに爆発してしまう。あの人たちは良い人だ、なんて自分に言い聞かせていた面もあったのでは。そう考えれば幸せでいられる。

前半は明るく面白くて、特に社長一家の母親がお嬢様過ぎてチャーミングだった。後半は半地下一家のお母さんが存在感を発揮。このための経歴設定だったのかと思う。

聞けば、彼の平均的年収であの屋敷を買いあげるには数百年かかり、つまり買える見込みなどないとか。

やけに韓国のことが勉強になる映画であった。お国紹介ビデオのよう。

メモ
半地下住居……韓国ではよくあるスタイル。戦時下ではシェルターにもなるとして広まったが、現在は減少傾向。
水石……石を鑑賞すること、またその石のこと。山水景石は自然風景などに似た形のもの、抽象石は何となくそれを思わせる形をしているもの。
ジェシカの覚え歌……有名な「Dokdo Is Our Land(独島は我が領土)」の替え歌。
社長がいつも飲んでるドリンク……漢方薬。高額なのでお金持ちのアイテム。
台湾ワンスイ・カステラ……いわゆる台湾カステラのこと。台湾の淡水(発音はダンシュイが近い)地区でよく食べられてきた。現地では台湾カステラとは呼ばない。韓国でもブームになったが、そのすぐあと添加物不使用を謳っていたのが嘘であることが発覚する事件があり、史上最も短期間で多くが消えた店。元オーナーということは少なくとも経済的ダメージを追って間もないことを意味する。
チャパグリ……㈱農心から販売しているスパゲティ風の袋麺「チャパゲティ」(または「チャーワン」)と同社の辛味ラーメン「ノグリ」を合わせて汁なし麺にしたレシピ。濃くて辛い味になる。韓国では袋麺をミックスする文化があり、これも誰でも知っているレシピ。映画で更に人気が出て、既にミックスしてある「チャパグリ カップ」も販売。庶民の味だが、映画内ではちぐはぐな高級牛肉が添えられている。90年代に軍で発祥したレシピなので、時代が現代であることを表すアイテム。
韓国のボーイスカウト……受験にも就職活動にも内申点として有用なことで広まった。費用は高額。現在は人気は落ちつつあり、直接的勉強に注力されている。一家の長男も経験があるということは、彼らは以前は完全な貧困層ではなかった可能性。
カブスカウト……ボーイスカウトは小6から中3、カブは小3から小5。cubは幼獣のこと。もとはウルフ・カブだったが日本ではオオカミのイメージが良くなかったためカブのみの呼称になった。
閑山島海戦……日本語ではかんざんとう。文禄の役の一つ。秀吉の時代。閑山島と巨済島の間で、朝鮮軍が日本軍に勝利した。文禄の役としては日本軍が勝利。
ミランダ警告……アメリカにおいて、被疑者が拘束下にあるとき尋問の前に告知する。黙秘権がある、供述は法定で不利な証拠として用いられることがある、弁護士または公選弁護人を求める権利がある、この取り調べをいつでも中断できることが告知される。日本においては、逮捕時ではなく検察が取り調べするときに黙秘権を告知する。強姦誘拐罪に問われたミランダが権利を知らないまま自白を強要された事件に端を発する。
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