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パラサイト 半地下の家族のEyesworthのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.9
【半地下家族の静かな革命と終焉】

2020年にアジア初のアカデミー作品賞をはじめ多くのタイトルを受賞。予測できない展開で話題作となったポン・ジュノ監督の作品。個人的に韓国映画はなんとなく敬遠気味でこれまで全く見たことなかったので、その点でも衝撃の出会いだった。

半地下の家に住む失業中のキム家の4人の家族は、長男ギウの狡猾な計画により金持ちのパク家に潜り込み、更には家族を豪邸の使用人として見事に全員を雇ってもらうことに成功。
前半はトントン拍子で金持ちにパラサイト(寄生)する様がコメディタッチで小気味よいテンポで進展していくのが面白い。
そして後半はある人物の意外な登場によって起承転結の転が完璧に決まった。いわゆる大どんでん返し。それから一気に映画のムードが暗転してきた。まさか裕福でなんの闇もなさそうなパク家にあんな秘密があるとは予想だにしなかった。
悪事を働いた人が自業自得・因果応報的にツケを払う勧善懲悪物はフィクションの定番であり、エンタメの一番の醍醐味だと思うが、この作品はそう単純ではなく、風変わりな脚本ならではのこのエンドがより一層映えて美しいなと思う。
日本だと到底考えられないが、より深刻な学歴重視と就職難、貧困世帯も多い社会問題が山積した韓国だとこんな家も案外あるのかもしれないと思えるのも不思議。韓国は我々の馴染み深い隣人だが、全く文化や価値観が違うので、正直なんとなく偏見や嫌悪感を抱いて色眼鏡で見てしまうのも否めない。しかし、近年の韓国のエンタメは映画もドラマも音楽も魅力に溢れていてこういう作品が日の目を浴びるのは、私のような韓国に関心が薄い層にとっても喜ぶべきことだと思う。その影響は日本のエンタメが陳腐に見えてしまう程ハマるものかもしれない。

最後に特筆すべきは、父ギテクを演じたソン・ガンホの「匂い」にまつわる嫌悪の演技であり、この作品の核になっているように感じた。半地下の家族の絆の象徴のような好むべき同じ"匂い"が、社会的地位の全く違う家族の前で、忌むべき"臭い"に変貌する様をよく表していた。
素晴らしい。アイデアの勝利👏
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