ボブおじさん

パラサイト 半地下の家族のボブおじさんのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.4
映画館で2回、地上波放送で1回鑑賞しており今回が4度目の視聴となるので、初見のインパクトは流石に薄れたが、それでもやはり面白い😊

この作品の根底にあるのは、格差社会がもたらした社会の歪みである。ただしポン・ジュノは、この問題を同時期に公開されたケン・ローチの「家族を想うとき」の様な社会派ドラマとしてではなく、ジャンルを超えたエンタメ作品として描いている。

なお、この頃から是枝裕和の「万引き家族」やトッド・フィリップスの「ジョーカー」など、行きすぎた競争社会からこぼれ落ちた貧困層を描いた問題作が話題となってきた。そこで描かれるのは、富める者と貧しき者が明確に分かれた〝二重構造〟の現代社会だ。

通常、格差社会を描くときは〝富裕層〟と〝貧困層〟の二極化を対比して描く。そして、富裕層の生活は、貧困層の犠牲の上に成り立つという〝社会の二重構造〟を前提として物語が描かれる。

この映画も前半は正にその通りの展開で、
丘の上の超高級住宅に住む〝富裕層〟の生活と
坂の下の半地下住宅に住む〝貧困層〟の生活を
わかりやすい明確な対比で描いている。

それぞれの家族が住む場所の高低差が、そのまま彼らの収入や生活レベルそして自尊心の高低差を表しており、その高低差は、やがて更なる悲劇をもたらす😭

序盤あることをきっかけに富裕層の家に貧困層の家族が一人、また一人と入り込み、遂には一家4人全員が潜り込む(寄生する)ことに成功する。

このプロセスは、スパイ映画などで次々とミッションを成功させていく場面を連想させ、見ていて爽快だ。富裕層側の家族、特に奥さんの警戒心が無さすぎて、上手くいき過ぎのところはあるが、コメディタッチの展開に思わず〝バレるなよ、上手くやれよ〟と思ってしまう😅

富裕層家族がキャンプに出掛けた雨の夜、貧困一家がまるでこの家を乗っ取ったかの様に風呂に浸かりリビングで庭を眺めながら酒を飲み交わす。正にこの瞬間が彼らの人生の絶頂だったのだろう。

だがその時突然、チャイムが鳴って彼らの運命が狂い始める…。

ネタバレ厳禁な映画なので、この後明らかになる、この映画と他の格差を描いた作品とのある〝決定的な違い〟を語ることが出来ないが、ここから話は予想を超えた方向に転換する。

父親を演じたソン・ガンホを筆頭に、貧困一家は揃ってクズ人間なのだが、何処か憎めないところがある。それだけに、彼らに待ち受ける運命を知ると…。

なおスコアは、最初に観た時の驚きを加味した点数としている。これから見る方は、一切の情報を遮断して見ることをお勧めする。



〈余談ですが〉
ご存じのように、この作品は2020年度のアカデミー作品賞を受賞するのだが、この年のノミネート作品は、下記の通りいづれ劣らぬ名作揃いで、改めて見ても当たり年だったんだなぁと実感する😊

作品賞ノミネート
「パラサイト 半地下の家族」
「1917 命をかけた伝令」
「アイリッシュマン」
「ジョーカー」
「ジョジョ・ラビット」
「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」
「フォードvsフェラーリ」
「マリッジ・ストーリー」
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

あなたの1位はどれですか?😊