和桜

パラサイト 半地下の家族の和桜のレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.0
格差や階級社会の中で生まれる立ち位置の違い。視野の違いから互いに見えない現実を、五感に訴え痛快に示すポン・ジュノ監督作。
最近流行りの「見えない人々」と「見ようとしない人々」の話であり、監督の言葉を借りれば悪党のいない悲劇でもある。
長年の生活環境から染み付いたものは拭いきれるのか。ある環境から抜け出せたと思っている人間さえも、本当にそうか?と自問し不安になるから注意が必要。全体としてはエンタメでもあるし希望とも取れる部分はあるけど、人によっては完全に引き下ろされる。

異様にネタバレ注意報がかけられてるので、以下は見てない人は見ない方が良いかも。




貧困を臭いとしてここまで訴えかけるものは的を得すぎてて辛くなる。貧困って臭いとして表れてくるもので、ポン・ジュノ監督はこちら側だったのか寄り添っているのかわからないけど、真髄に今の社会に向きあってることが分かる。
『ジョーカー』は途中まで真顔だったけど、最後は上手く映画的に逃げ切ってくれたから良かった。それに対して『パラサイト』は途中までコメディチックで笑ってたけど、臭いの話からとんでもない重さがのし掛かってキツすぎた。どうしようもない現実であり、本質。

この映画はそこから抜け出せたと思ってる人間にも絶望的に辛い。もちろんポン・ジュノ監督は問い掛ける形で未来に託してるようにも見えるんだけど、生まれで全てが決まるとまで言われてる韓国の映画として自分には希望が持てなかった。
ある意味でどれだけ頑張ろうと生まれからは逃れられないという資本主義への最大級の批判とも取れて、一部の人には覚悟がいる映画。
もちろん相手の立ち位置まで降りていけば、或いは上がっていけば、同じ世界が見れる可能性ではあるんだろうけど。
しかしこの内容を共生関係とも取れる『寄生虫』と名づけてしまう凄いさ。
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