パケ猫パケたん

パラサイト 半地下の家族のパケ猫パケたんのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
5.0
ポン・ジュノ監督作、かつ、カンヌのパルムドール受賞作なので、当然、鑑賞。

『フォードvsフェラーリ』も観たかった
けれど、少しでも良い、レビューにするために、映画館🎥で二度鑑賞。オイラの努力を誉めてね(^_-)。まぁレビューワーなら苦労も出てくるわな。

映画の情報は、パンフレットのみで、皆さんのレビューもまだ、読んでいません。さぁて飛び込んじゃおo(^o^)o
今回も長文駄文ネタバレごめんなさい(>_<)♪

「パルムドール受賞作にしては、解りやすく面白かった。」再鑑賞時に於いても、ひとつとしてムダなシーンが無く、また、虹色な照明も美しかった。街並み全てが、半地下の家も、コルビジェ風の豪邸もセットだそうで、酷く曲線的な家と、果てしなく直線な豪邸の違いが、視覚的に変化を生み出し、また、悲しくもある。

撮影も素晴らしく、常にウェットな感じで、時として映画的な瞬間のカメラワーク。例えば、半地下の長女がタクシー内でパンティを脱ぐ時の瞬間エロス。社長が妻への愛をためらいながら、告白する、一呼吸於いての180度パンニングとか。また、ポン・ジュノの描く闇は、今回も本当に暗く漆黒で、痺れました。

ここで、オイラは政治的な事は、苦手なんだけれど、この映画の構造を解釈してみます。

地上の生活は、韓国の財閥にみられるような支配層。(と、北朝鮮首脳。) 半地下の生活は、韓国の国民。要するに財閥系企業の狭き門に入れなかった人々。そして、地下の生活は、年金も何も無いとの事なので、奴隷の様な【北朝鮮の国民】と、敢えて仮定してみます。映画の中で兄や姉と呼びながらも、足を引っ張りあい、殺しあうかの両国国民たちが、コチラからみても悲しい。

更には、あの庭のテントで「監視」していた妙に色白な男の子は、いかにも幼稚で、頼りなく、まるでトランプ=アメリカではないか。そもそも、幼児の絵のような、バスキアの絵画を崇める事など、アメリカ文化は底が浅いところがある。そして、あのテント自体が、核弾頭に似ており不気味過ぎるなぁ。

西洋化の進む東アジアに於いて、ノアの方舟みたいな大洪水が起きた時、或いは、最期の第七の天使の吹くラッパの聞こえる時に於いては、地上の生活者も地下の生活、核シェルターに降りて、そして、潰えてしまうのだろうな、有事に於いて。

あと、最期の方で二人の男がネイティブ・アメリカン(こちらも黄色組)の扮装をするのも鳥肌ものだった。要するに、昔から、アメリカ等の白人たちに徹底的に搾取される黄色人種たち。しかも、黄色同士が互いにいがみ合う構造も白人が作っている感じがする。アジア一帯にパラサイトしているのは、実は白人じゃんって事だと思います。やっぱ脚本も凄すぎる。

映画の最後の惨劇も、ちょっとしたシミュレーションみたいで怖い。オイラの上記の解釈を敷衍してみると、ある記念日に、狂った北朝鮮がアメリカや韓国に襲いかかり、アメリカは迎撃ミサイルが利いて無傷、北と南が殺しあい、地上も半地下も地下も等価になるカオスな社会の到来。そして、ある者は、永遠に核シェルターに籠らざるを得ないという修羅場。との解釈(>_<)

パンフレット(町山さんの解説有り)には、不思議な事に、これら巨視的・政治的な事は一切書かれていませんでした。もちろん、本作は、今流行りの「家族の映画・格差社会の映画」の文脈で捉えることも出来ます。そして、それがまぁ自然です。しかし、情報過多・情報不感症な現代・観客に於いて、オイラの上述の様な巨視的な解釈が出来るかどうか。この映画は、ポン・ジュノ監督が提示したリトマス試験紙だと思います。【地下からの悲痛なモールス信号を、読み取る事の出来る】、二重構造の映画になっていると思います。

だから、今日、東アジア圏で作られるべき内容の最高の映画でしょう。

以上、暗い内容に成りましたが、あとは
お楽しみの映画話をします。こっちはオイラの得意分野ですo(^o^)o♪o(^o^)o

まず、オイラ未見なんだけれど、伝説の傑作、韓国映画の『下女』(1960)にインスパイアされていると思います。家政婦もののプロット。そして、情事の様子を窓に張り付いて見ている、スチール写真。この映画ではソファーの下に張り付いていますww  あと、ジャケットに映っている女の人の死体らしい足は、『下女』由来かもしれない(^o^)♪

配役に於いて。地上の生活の奥さんが角度や髪型によっては、松嶋菜々子さんにそっくりで『家政婦のミタ』かよって狂喜しました。あと、半地下の生活の長女が上手かったわけですが、松岡茉優たんに似合いそうな役だなぁって思いましたo(^o^)o♪

この映画の音楽が、清涼感があり、かつ哀切なので、是枝監督の『空気人形』に目配せしているみたいですね。

過去に、黒沢清監督が、ポン・ジュノ監督作『殺人の追憶』のスケールの大きさを絶賛して「黒澤明の後継者が、日本ではなくて韓国にいた!」と言っていました。

黒沢清監督がらみで見れば、この映画で描かれる、大邸宅の地下室、その極めて奇形的な設計は、黒沢清監督の『クリーピー 偽りの隣人』などを彷彿とさせます。かなりの高確率でオマージュでしょ(^o^)♪

そして、黒澤明監督です。丘の上の大邸宅のルックが『天国と地獄』ですね。まぁそれは表面上のことです。この『パラサイト 半地下の家族』は、核兵器のある時代の恐怖を、堂々と主題として取り上げている姿勢が『生きものの記録』、『夢』と同じで、流石です。立派です。

オイラの映画の記憶を振り返って、半地下の場面といえば、ベルトルッチ監督の『暗殺の森』のシーンの色彩と靴音などが、なんとも優雅で美しかったわけですが、世界は退化していくのでしょうか。

長文、ご精読ありがとうございます❗


(皆さんのレビュー、やっと読めます♪)