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パラサイト 半地下の家族のcoroのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
3.7
裕福な家族と貧しい家族の出会いから始まる悲しい物語。無意識な悪意が言葉になったとき汚れなき心は穢される

妻の影響もあって9本目のポン・ジュノ作品。(結構当たり外れが多くて、満たされたのは"殺人の追憶"と"母なる証明"くらい。でも、この作品はこちら側)
隣県まで足を運び久し振りに大きなスクリーンでの鑑賞。ミニシアターのように古の香りはしてこないけれど、映像の中から感じられるはずのない香りが漂ってくる。冒頭の美しいハングル文字が物語が進むにつれ(私の中で)甘い蜜にたかる蝶々の口へと変化していくように、心の持ちようによって変容する香り

韓国社会で極めて深刻な問題となってきた貧困や格差、親北政権を揶揄するような台詞が随所に散りばめられている。一見すると可笑しく映るそれらのシュールな笑いは苦くて、貧富の格差を浮き彫りにする洪水シーンでは、10年前ハリケーン"カトリーナ"により街の8割もが冠水したというのに、住民の大半が黒人だからと見捨てられたニューオーリンズ市民のことを思い出した…








以下ネタバレ

爽やかな風、降り注ぐ日差し、有り余るほどの贅を浴び徐々に増殖していくキム一家。そんな彼らの綻びだらけの家族計画が怖い。不穏な予兆に満ちた豪雨が怖い。父親が辛辣に語る無計画の話も怖い。それよりももっと怖いのは、ある意味純粋とも言える家族たちを集め、敢えて倫理という境界線を超えさせてしまうポン・ジュノ。道徳的な良し悪しの判断さえ視聴者の価値観に委ねている。
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