テツオ

パラサイト 半地下の家族のテツオのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.6
自分を棚に上げた、ディテールの感想なら幾らでも繕えるけど、自分はこの映画を自己投影して語る事は恐怖だと感じました。

それは、高台に住む日向の人間に嫉妬し、憧れ、嘲笑し、時には怒りを感じ、恨み妬み嫉む卑しい気持ちと

下町の、更に半地下の、薄暗くカビと生乾きの匂いの部屋に棲む、まるで害獣、害虫の様に自己を卑下して暮らし、
健康で能力が有っても、その日暮らしの無計画な取り繕いに費やしてしまう。
そんな無力で非力な多くの人間に、同情、共感、それ以上の感情を自分自身に見い出した事を認めなければいけない恐怖なんだなと。

そしてそれを認識したとしても拭えない、自己にもふりかかる不安。

決して言葉に出来ないけれど、敢えて口にする気にはなれないけど、今まで自分の人生でも感じた事のある、確かに存在する暗い湿った空気の様なもやもやを
ぐぅの音も出ないほどの力量で映像化された、魅力あるキャラクターと物語に感情移入させられました。

世界的にも評価される黒澤明の映画は普遍的な人間の業や社会の病理を描いたから、今観ても面白く、新鮮なのだなと思う。
アジア初のアカデミー作品賞を取ってくれたら嬉しい。
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