8骨8

パラサイト 半地下の家族の8骨8のネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

昨日、パラサイト 半地下の家族を2回目視聴したけど、これ、めっちゃJOKERに似てる。
パラサイトのあの水石はそもそも抽象的な自然のモチーフとしての飾り物で、あの映画で自然というとかなり象徴的なのが、金持ちの家は丘の上にあって、光がたくさん降り注いで、緑がいっぱいの庭がある。
逆に半地下家には地上に接してるわずかな光が唯一自然を感じられるもので、下水よりも下にいるごみごみした暮らしを強いられてる。
そんな半地下家族のお兄ちゃんにとってはあの水石は、自然の光降り注ぐあの家の金持ちの暮らしへの憧れ、希望の象徴なんだよね。
JOKERにとってはそれがおせっかいな仕事仲間からもらった拳銃で、どっちもそれを友人からもらったところからずっと変わらずくすぶってた人生が大きく動き出すことになる。
クライマックスでパラサイトは家主がキャンプに行ってる間に家に上がり込んで宴会やってると家主たちが帰ってきて、災害レベルの豪雨の中ずぶぬれになりながら丘の上の家からこそこそと逃げ帰る.
すると、家は1階でさえ浸水状態、半地下の家族は財産のほとんどを失ってしまう。
JOKERでは、例の超名シーン。長い階段から降りてくるあのシーン。
完全に悪の道に落ちていく。”計画”と”希望の象徴”である拳銃を隠し持って。
JOKERにとっては、銃は怒りの象徴だったはずだけど、賛同者がどんどんついてしまったことで、希望に変わったんだよね。
金持ちが軽はずみに貧困層をバカにしたことで怒りを買って殺されてしまうっていうラストも重なるところがある。
パラサイトでは、地下にいたおじさんのにおいに顔を背けた金持ちの旦那の態度にお父さんがキレて殺しちゃう。
んで、JOKERはテレビでみんなの笑いものにされた復讐で司会者を銃殺する。
豪雨の日、貧困層の人たちが被災によって数少ない財産を失ってるのに対して、丘の上で丈夫な家に住んでる富裕層たちは翌日になって、子供の誕生日にいい思い出ができるとか言ってむしろ大雨が降ってよかったなんて言ってるのもすごい。
突然に誕生パーティを開いたのに、優雅な人たちがたくさん集まって、昨日の災害がまったくの嘘みたいに楽しそうに暮らしてる。
あのシーンも、JOKERの外で暴動が起きてるのに、優雅にオペラを鑑賞していて、アーサーみたいな小汚い人間がトイレにいても全く視界に入っていないかのような態度に似てる。
両作品ともに、現代社会における深刻な経済格差問題を扱った作品で、どっちもものすごく深いところまで問題に切り込んでるからこその類似だと思う。
どっちの作品も人殺しがでてきてしまうし、その人殺しってのは格差の中で下の方にいる人間。パラサイトは半地下の人間と地下のさらに地下の人間が醜く争い、JOKERでは、その日暮らしの労働者アーサーを小汚い格好して学校にもまともに言ってなさそうな不良少年たちがいじめる。
醜い争いは常に持たざる者の中で起こってしまう。だけど、それは富裕層による搾取のあげく資源はもちろん、発言権すら奪われてしまった人間たちのせめてものあがきなんだ。
富裕層はそんな貧困層たちの醜い争いや困窮した生活を見ようともしない。
でも、富裕層たちがそうしていられるのは、搾取の構造があるからにほかならない。パラサイトでは半地下や完地下の家族が寄生虫として金持ちに寄生していたが、社会全体でみると、貧困層の労働力をあてにして社会のシステムを悪用して社会に寄生してるのは富裕層の方だ。
そういう意味で、パラサイトというタイトルは実に皮肉が効いてるおもしろいタイトルだと思う。
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