あき

風の電話のあきのレビュー・感想・評価

風の電話(2020年製作の映画)
3.7
岩手県大槌町に実在する、亡くしてしまった大切な人へ生前伝えきれなかった想いを伝える電話線の繋がっていない電話ボックスをモチーフにしたドキュメンタリータッチのロードムービー。
設定だけ決めて台本がないと言われる諏訪敦彦監督の作品だけに、西島秀俊・三浦友和・西田敏行といった錚々たる名優が出ているにも関わらず、作り込まれた作品ではなくまるでホームビデオで撮った映像をつなぎ合わせたようなドキュメンタリーを観ているようで、
それだけに“いわゆる“映画にあるようなメリハリある抑揚もなく淡々と物語は進んでいくが、毎日ドラマなんて起きないそれこそが我々の本当の日常なわけで、その単調さが逆に違和感なく無意識に物語へ自然とのめり込む。
そして冒頭こそ少しメンヘラチックだった主人公ハルが、
たくさんの人と出会い心を通わすことで、少しずつ自分の心を取り戻していき、
エンディングでの、風の電話の中での長い独白シーンで、ハルは決して感情的に訴えず自分の気持ちを抑制して家族への想いを静かに伝えるその健気な姿に思わず涙腺失禁してしまって、
想定外に短いエンドロールでは腫れたまぶたを隠しようもなく週末で人混みの激しい吉祥寺に放り出された始末の悪さに苦笑い🌀
でもこれも上映館少なめなんだよな。
とてもいい映画なのにあまり知られずに消えていくにはもったいない映画。
あき

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